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『愛姉妹IV 悔しくて気持ち良かったなんて言えない』 感想

愛姉妹Ⅳ 悔しくて気持ち良かったなんて言えない
愛姉妹IV 悔しくて気持ち良かったなんて言えない - アダルト美少女ゲーム - DMM.R18
愛姉妹IV 悔しくて気持ち良かったなんて言えない -市川小紗集大成! 豪華絢爛原画集パッケージ版(一部総天然色)- (シルキーズ) (18禁) [ゲーム] - Getchu.com


エルフのサブブランドであるシルキーズの人気シリーズであった「愛姉妹」の最新作だが、構成メンバーが一気にシルキーズプラスに移籍してしまうために結果としてブランド最終作となってしまったという経緯を持つ本作品。愛姉妹といえば「美人姉妹を脅迫して凌辱するも、次第に情に流されて和姦のようにノリが混じっていく」というストーリーラインが基本であり、本作もそこから外れることはない。ないのだが、脅迫的な、ドロドロとしたノリはかなり初期の段階でかき消えてしまい、和姦指向の強いエロに早々に移行してしまったことにはちょっとした肩透かし感を覚えてしまった。

まず、攻略ヒロインたちがどいつもこいつもエッジが立ってて普通じゃない。一番特徴的で一番気に入ったのは姉である愛美で、主人公が母親のネタで脅迫しようとしたのにすべてを喋らせずにまず殴ってくるという「言葉より先に手が出る」タイプのキャラ。しかしさばさばとした気っぷの良い性格で、不覚を取って処女を奪われてもめそめそと嘆くこともないし、中盤以降は「脅迫されているという体裁でエッチを続けるのはめんどくさい。アンタとのセックスは気持ちいいからこのままの関係を続けよう」と自らセックスフレンドとなることを提案してきて思わずのけぞったよ。女神か。まあ、「凌辱されているうちに恋心が芽生えてきて…」といったよくある展開を避けた新しいアプローチだなと感心もしましたが。
それに限らず、愛美は健二との距離感の取り方がとても良い。害意を持たないセフレ以上・恋人未満みたいな空気の中で、エロシーンの前後に差し込まれる微妙に気が抜けた遣り取りがいちいちグッと来るんだけど、特に真っ裸で寝床の上でアイスを食べている愛美とのやりとりが非常にたまらない。外見的にもロングヘア・黒髪・巨乳・ツリ目・姉キャラと役満コースだしな!

愛美以外にも、話の全ての発端となった江利子さんと佳祐のギクシャク夫婦も、清美と奈々子の凸凹親友コンビも、普通とはちょっとズレた感性の持ち主たちだけど面白い奴らだ。ポチャ子も、登場した当初は非常にめんどくさい地雷女だなおい!と顔を顰めたものだが、そのうちに、めんどくさいさも含めて可愛いなこの女、仕方ねーなーと健二にシンクロさせられてしまう。
そんな独特(褒め言葉)な登場人物たちに彩られた本作品は、過去作品に比べたらコミカルなCG(目の描き方を崩したりするような漫符表現)も多めで、どことなくバカゲーっぽさ・エロコメっぽさを漂わせたノリで進む。そんな独特の空気感が頂点に達したのは、ハーレムルートでの家族会議のシーンだろうか。普通の寝取りゲー・凌辱ゲーだったら大層な修羅場になっているはずなのに、馬鹿馬鹿しさを残しつつもエロシーンに結びつけつつ大団円ハーレムエンドへの道筋を付けてしまったことには心底感服した。


そして頭のネジがぶっ飛んだヒロインを受け止める主人公である健二のキャラ立てもひと味もふた味も違う。不幸な生い立ちで現在の境遇も恵まれていない所謂「底辺層」として描写されている彼は、己の肉欲と不幸の腹いせにセレブ家庭をまるごと不幸に陥れようと脅迫するような屑であることは確か。だが、おなじシルキーズのブサイク系主人公でも、『学園催眠隷奴』のデブジさんみたいな完全なる悪性なのかというと、そうではない。
脅迫して凌辱している女の子に泣かれたら途端にアタフタと動揺してしまうし、自分の性欲をヒロインに叩き付けようというよりは、「自分も気持ち良くなるために相手も気持ち良くさせてやろう」「女の子が本気で嫌がる行為を無理強いしても、気持ち良くセックスできないからやらない」という予想外の紳士っぷり。つーか、そもそも凌辱キャラのはずなのに一人称が「僕」という時点でお察しなんだけど、どす黒い闇に染まっておらず、愛嬌があって憎めない。

そんな憎めない健二を、なんだかんだでヒロインたちが受け容れてしまう過程が面白い。健二がブサメンのデブというのは作中で何度も強調されていて、それが覆されるということは一度も無い。ブサメンであることを否定されることもない。だが、今作品のヒロインたちは、それらを前提とした上で、主人公を受け容れてしまう。お前ら脅されたり騙されたり凌辱されたり強姦されたりしてただろ、という突っ込みを入れたくはなるものの、この主人公とヒロインの組み合わせじゃあまあ仕方ないかなという感じで得心がいってしまう。
それは学園エロゲの主人公のハーレム展開並みに現実的には有り得ない展開なのだが、学生ものエロゲの主人公は「絶対にこうはなれない過去の理想型」な訳で、「まず実現しないファンタジー」と割り切って受容できる訳ですよ。でも「ブサメンでデブだけど、気弱で女の子の気持ちを踏みにじれない」なんて自己投影できてしまう主人公が女の子と…なんてシチュエーション、現実から地続きな先にある願望じゃないですか。「(ブサイクだけど)アンタとのセックスは気持ち良くて気に入っている。このまま孕まされたい」「(ブサイクだけど)お兄さん以外とセックスしたくない。このまま孕んだら子供を産みたい」と種付けをせがまれるこの感動ったら!!!!!


原画担当はブランドお馴染みの市川小紗さんだけど、これが非常にエロい。今までの市川原画も非常に淫靡だったけど、たとえば女系家族や河原崎家なんかは塗りが綺麗すぎて、興奮に直結して股間にダイレクトに訴えかけるようなエロさではなかったと個人的には感じていた。エロスはゲームのダウナーかつミステリアスな雰囲気とかも込み込みで感じるものかなーと。
しかし今作は塗りの方向性を変えたのか、陰影の付け方が全体的に強めになって体型の見せ方にメリハリが感じられて非常にエロい。いわゆるエルフ塗りの延長線上なのにここまで直截的にエロくなるというのはわりと予想外。そして市川さんの絵柄自体も全体的に肉感的な重量感を強調する方向になっており、特に愛美のスレンダーなのに自己主張が激しいおっぱいの描写が素晴らしすぎてたまりません。


ツボをこれ以上ないくらいに的確に押さえてこられた本作だが、不満点も無くはない。まずはCGの使い回し・シチュエーションの使い回しが多いこと。ただこれは愛姉妹シリーズという大枠の中では「毎日のように女達を呼びつけてエッチをする」っていう筋立てを外すわけにはいかない以上は仕方ないことではある。調教ゲーとかだってイベント調教じゃない日常の調教シーンにすべて新規CG起こすわけにもいかないから、使い回しはどうしても多くなってしまう訳だし。そもそも使い回しの方法が上手というか、マンネリを感じさせにくいようになってはいる。
でもこの作品はエンディングへの条件分岐がちょっと分かりにくいので(朝昼夜のスケジュール管理や複数キャラ同時進行のフラグの維持とか)、同じシチュエーションを何度も見続けることになることにはストレスを覚えるのよな。攻略に頼っても結構な長丁場だったし、それが不満といえば不満。

それから、ヒロインたちと奇妙な心の交流を重ねて仲良くなっていく過程がもうちょっと見たかったという欲も出てしまっているのだが、これは贅沢な願いだろうか。作品の方向性を考えればそれほど膨らませ切らない今の分量バランスが正解なのだろうけど、キャラ立てがとても上手で主人公との間合いの取り方も一種独特、単純なラブラブ和姦と違う感じだけど確かに何かが繋がっているというのは新境地だったと思うので、勿体なく感じてしまう。シルキーズプラスの移行に伴ってその流れが途切れてしまうとすればとても残念だ。シナリオライターは女系家族3の人らしいので、市川さんともども今後の去就が気になりますわ。


Windows以前のかつての最盛期を知っているユーザーとしては、シルキーズのブランドとしてはやっぱり河原崎家の一族・野々村病院の人々、あとは恋姫ビヨンドといったあたりでブイブイ言わせていた頃の印象が未だに強い。2000年代の再始動後は業界内部のポジションは相対的に減退してはいたものの、アンジェリカのような特徴的なタイトルや女系家族シリーズなどもリリースしていたので、ブランドとしてこれで終わってしまうのは非常に残念ではある。だが、その最後の最後でこのようなとても素晴らしいタイトルを遺してくれたことには心からの感謝の気持ちしかない。ありがとうありがとう。
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