大槻涼樹最新作 『赤さんと吸血鬼。』 情報公開

赤さんと吸血鬼。|ALcot ハニカム



かつてのアボガドパワーズ『黒の断章』以来ずっと活動を追い掛け続けている大槻涼樹所長の最新作が情報公開。前作である2年前の『デッドエンド Orchestral Manoeuvres in the Dead End』と同様に次もコンシューマでの発表になるんだろうなあとある種の諦観混じりで待っていたのだけれど、『蠅声の王 シナリオⅡ』から4年ぶりとなる18禁エロゲーのフィールドへの復帰、しかも舞台はまさかのALcot ハニカムブランド、そして安定の宮蔵プロデュースというこの事実に震えが隠せません。

この一見では異色にも思える組み合わせに至ったのは大槻所長いわく合縁奇縁というけれど、実は個人的には、実現したらかなり面白くなるんじゃないかと期待していた組み合わせだったりするのですよ。以前に『春季限定ポコ・ア・ポコ!』の感想を書いた時に、次のハニカムラインの新作として「メッセージ性の強いシナリオライターが描くコンパクトに纏まったストーリーもの」を期待していると書いたんだけど、実はこのときに脳裏に浮かんでいたのはまさに大槻涼樹シナリオ+宮蔵プロデュースという今回の組み合わせ。でも、まったく根拠がない願望あるいは妄想という訳でもなくて、実現する可能性はあるはずだと思ってました。……あ、後付けじゃないよ!?ホントだよ!?(まあ、ぶっちゃけ以前の記事でボカさずに書いておけば満面のドヤ顔出来たのになあとは思ってるけど)

というのも、今回彩色チーフで参加しているくない瓜さんは元あぼぱMENで元ロスクリスタッフ、更にはセカンドノベルをはじめとしてテクスト。ブランドの作品にもCG彩色として参加している、今もって大槻所長と縁が深い人でございます。で、その彼女、実はALcotの宮蔵さんの実の妹だったりするんですな。血縁での繋がりだけではなくて宮蔵氏の同人ゲームやハニカム文庫/新書にCG彩色で参加するなど、仕事の上でも関わり合いがあるようなので、その時点で可能性の糸は繋がっているだろうと。ついでに言えば、くない瓜さんはかつてフライングシャインで原画をやっていてて現在の仕事においてもその界隈との関係が見えるので(たとえば『ポケットに恋をつめて』のたにみちNONは元フラシャ組)大槻所長と仲の良い元フラシャの荒川工経由での繋がりもあるんじゃないかなーとか。

それから、ハニカム文庫って、まず企画の強さ・面白さありきというイメージがあって。力量のあるシナリオライターの、尖ってて面白いけどボリューム感は出せなさそうな企画を、狙いを絞ってコンパクトに纏めてパッケージングするという方向性。で、大槻所長って、まさにその、エッジの立った企画(というよりネタ)をバンバン生み出す人な訳で。かつてのPCエンジェルで連載していた「北の国から」はその最たるもので、そもそも氏の代表作のひとつである『終末の過ごし方』のネタだってそのコラムで掲載されていたもの。『長靴をはいたデコ』なんてまさに企画そのものがネタだったし(誉めてます)わりと最近でも「TOKYO 非実在性少年」なんてネタ書いてたし。
そういう意味では、企画の面白さが重要っぽい(決めつけ)ハニカム文庫ラインは、大槻所長の強みが生かせるフィールドなのではないかと。企画は尖っていて面白そうでもそれを膨らませられるかは筆力次第だけど、所長って実はわりと苦手分野がなくなんでも書けちゃう人だし、その点において心配することはないだろうから。(捻り無しの王道ジュヴナイルな『テスタメントスフィア』なんかもサラッと書いてたしね。復活希望)

あと、大槻涼樹のファンとして死ぬまで追い掛け続けるつもりの自分としても、ちょっと不満点はあった訳ですよ。ひとつは「デジタライズド・ゲームブックに固執しすぎじゃね?」ということ。いや、あのシステムはとても楽しいしゲームブック/TRPG直撃世代だから思い入れも強いよ。でも、ゲームブックの双方向性を活用できず、そのシステム的な煩雑さが足を引っ張る場合は、作品にとっては逆効果なんじゃないかと。具体的には『長靴をはいたデコ』。あの箱庭的な物語世界を表現するのにゲームブック形式というのはピッタリだったように思うけれど、メタ構造を描いた物語としての表現を重視するなら、通常のADV形式にしてもっとボリュームを膨らませたほうがもっとプレイヤーを没入させられたのではなかろうかという相反する気持ちが発売当時からずっとあった。
それから『デッドエンド』を発表した時は、『蠅声の王』大好きだったからとても嬉しかった反面、またこの形式を引っ張るのかという気持ちがわき起こったことも否定できない。探索シーンとかや雑魚戦闘はそのインタラクティブ性がとても楽しいんだけど、物語のクライマックスにおいてはパラグラフを繰っていく作業によるブツ切り感が情動の盛り上げに水を差して「ゲームブック形式でプレイする楽しさ。サイコロを振る快感」と「物語の盛り上がりを阻害された不完全燃焼感」の両方があったのもまた事実。なんでも書けるはずの人なんだから、ひとつの形式に拘らずに、もっとバリエーションに富んだ物語を見せて欲しいんだけどなあというモヤモヤした気持ちがずっとありました。

もうひとつは、これは本当は不満点とは言いたくないんだけど、「自分企画だとボーク寸前のスレスレを狙いすぎです。もっとこう、手心というか…」ということ。いやまあ今作がスレスレでないとは言わないし(苦笑)そのスレスレのラインを狙っていくアティテュードに惚れたからこそ信者を続けているのだけれど、信者だからこそもっと評価されて欲しい。ロスクリも活動を止めてしまって久しい今となっては、『終末の過ごし方』あたりから知ってるようなオッサンユーザー以外には評価されてなさそうな空気があるけど、もっと若いユーザーを魅了して欲しい訳ですよ。あぼぱ後期からずっと企画・ディレクションも含めて統括している感じがあったけど、実力がある人に企画全体の舵取りは任せてシナリオライティングに専念すれば、今まで見られなかった新しい一面が見られるんじゃないかいう希望があって。そして、ライターが変わっても一定の成功を収めているハニカム文庫は、まさに舵取りである宮蔵氏のプロデュースの巧みさが際立つラインなので、その両者が交わればとても魅力的なものが生み出されるのではないかと妄想していた訳です。


そんな脳内妄想がまさかの現実化という事実に、未だに冷静にはなりきれません。敢えて言えばミドルプライスの文庫ではなくフルプライスの新書ラインというところに、纏めきれるかという不安感が残るわけですがそれはそれ。大槻所長にとってもALcotにとっても新境地となるであろう本作、2013年下半期の今人的な本命のひとつに躍り出ました。全身全霊全力で期待しております。……発売までにハニカム新書の『あえて無視するキミとの未来』を開けよう。うん。
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