春季限定ポコ・ア・ポコ!|ALcot ハニカム
春季限定ポコ・ア・ポコ! (ALcot ハニカム) (18禁)- Getchu.com
『春季限定ポコ・ア・ポコ!』 カウントダウンムービー"まとめ" ‐ ニコニコ動画(原宿)
『リアル妹がいる大泉くんのばあい』『キッキングホース★ラプソディ』に続く“ハニカム文庫”の三作目(旧シトラスの宮蔵プロデュースな低価格タイトル『死神の接吻は別離の味』を含めれば四作目)。キャラ数を絞って人間関係の密度を上げることで、プレイ時のボリューム感を高める設計にしているのは過去作と同様。実績が弱いライターということで気にしていたシナリオ部分についても、文章運びには余計なクセもなく読みやすいし、掛け合いのテンポ感も悪くない。システム上の細かい画面演出は下手なフルプライスタイトル以上に頑張っているし、ワイド解像度対応になって立ち絵演出の迫力が増しており視覚的な楽しさも強い。(システムといえば、既読メッセージのバックログで地点を指定すると“シーンごと”巻き戻ることが出来るのがオッ!と思ったらEDスタッフロール見たら安心の合資会社ワムソフトの名前があってなるほど納得)
道具立てやテーマ設定がプレーンでアクが少ない分、キャラの魅力とそれを支える声優の演技の占める比重は高い。まずインパクトがあるのは、駄目妹っぷりを十二分に発揮している残念美少女な藍。原画がタコ焼き氏でかなり極まった残念なシスコンっぷりというところにはリアル妹の残影が仄見えますな。つか、所々で聴ける低音が効いたダミ声がどうにも白井黒子(しかも変態淑女の度合いがアップした超電磁砲のほう)を思い出してしまって困ったわ。そして藍とは別ベクトルで残念なのが天才肌でつかみ所がないトリックスター体質の桜。藤咲ウサの脱力しまくりな演技とここぞとばかりの半目ドヤ顔はマジでイラッ☆とくるわ(誉め言葉)。そんなふたりと比べると、夏海は一見するとベタなツンデレキャラのテンプレ通りのように見えるかもしれないが、そんな彼女の魅力は個別ルートに入ってからが真髄。長年秘めていた想いが叶えられた嬉しさのあまりにひとり悶え狂う姿がもう可愛くて可愛くて何度もリピートしてしまった。さすがの悠木姉妹クオリティー。アチ恋なんかもそうだけど、こういう突き抜け方をした時の五行なずなの演技の破壊力・突破力はとても素晴らしいよね、ほんと。
今回前面に押し出されている“青春”“青さ”“若さ”というテーマは調理方法が難しく、実際本作でもちょこちょこと首を傾げる箇所があった。無茶な局面を打破するための推進剤が登場人物(主に主人公)の精神的な未熟さ・若さに依っているのはどうなのかとツッコミを入れたくもなる。だが、そういう青さがあってこその青春だという言い方も出来るので、一概に否定しきれない。“青春”というテーマ設定は、ある一定のシチュエーションを切り取って短い尺で密度を濃く描いた方がその空気感を表現し易いはずだが(他ジャンルの小説や漫画とかでも短編の方が破綻してボロが出にくいよね)本作ではその意図は一定レベルで成功していたとは思う。
エロ成分が過去作と比較すると明らかに物足りないところは本作で一番残念な点だった。それはテキスト描写の薄さもさることながら、キャラの性向に根ざしたエロじゃない=凡庸なシチュエーションの普通のエロシーンに落ち着いてしまっているところが大きいのかなと思う。ていうかあんなにエロス溢れるウェイトレス姿の桜の脇コキシチュが無かったのは納得できねー。おるごぅる女史の生き霊はそういうエロシチュの拘り部分にこそ宿るべきだっただろう猛省しろ。過去作が結構ツボを突いてくるエロシチュが多く実用性が高かっただけに落胆の度合いも尚更。
良くも悪くもクセがないフラットな作風なので、過去作と比較した時に、おるごぅる(残念な妹)と保住圭(いちゃラブ)という「得意な作風が確立され、既にある程度の実績と評価を得ている」ライターに比べると今回担当の瀬尾順はその辺りのインパクトが弱い。そのため、いまひとつ歯ごたえに欠けるなあ、なにが強いアクセントになるものが欲しかったなぁと思ってしまうものの、全体的なバランスとしては悪くない……というかかなり良く、価格以上の価値は確実にあった。過去作とはちょっと違った方向性の作風でありながらも、基底となる部分の統一感は同じ匂いを感じるあたりは宮蔵プロデュースのラインのパッケージングの上手さが窺えるというもの。エピローグでタイトルバックを変化させることで「終わりよければすべて良し」的な爽やかな読了感を醸成させる演出はもはやハニカム文庫のお家芸。
おるごぅると保住圭だけだったら「ライター人気におんぶにだっこ」と揶揄されても仕方がなかっただろうが、既存作品で特段の実績がある訳ではない書き手を起用して(本作の内容を見る限り、今回の瀬尾順さんは地力はある人だと思うが)ここまでの作品に仕立て上げてくるあたり、宮蔵プロデュース作品の今までの好評価はフェイクやフロックではなく実力によるものだったと証明されたのではないだろうか。“ハニカム文庫”のレーベルイメージは本作で確固たるものになったと言えるだろう。当然ハニカム文庫レーベルの次回作にも期待しているのだけど、個人的な願望としては、今までのノウハウを生かして、メッセージ性の強いシナリオライターが描くコンパクトに纏まったストーリーものが見てみたいなぁと思ったりしている。
関連エントリ
哀しみの機械 - 『キッキングホース★ラプソディ』 コンプリート
哀しみの機械 - 『リアル妹がいる大泉くんのばあい』 コンプリート
哀しみの機械 - 『死神の接吻は別離の味』 コンプリート
春季限定ポコ・ア・ポコ! (ALcot ハニカム) (18禁)- Getchu.com
『春季限定ポコ・ア・ポコ!』 カウントダウンムービー"まとめ" ‐ ニコニコ動画(原宿)
『リアル妹がいる大泉くんのばあい』『キッキングホース★ラプソディ』に続く“ハニカム文庫”の三作目(旧シトラスの宮蔵プロデュースな低価格タイトル『死神の接吻は別離の味』を含めれば四作目)。キャラ数を絞って人間関係の密度を上げることで、プレイ時のボリューム感を高める設計にしているのは過去作と同様。実績が弱いライターということで気にしていたシナリオ部分についても、文章運びには余計なクセもなく読みやすいし、掛け合いのテンポ感も悪くない。システム上の細かい画面演出は下手なフルプライスタイトル以上に頑張っているし、ワイド解像度対応になって立ち絵演出の迫力が増しており視覚的な楽しさも強い。(システムといえば、既読メッセージのバックログで地点を指定すると“シーンごと”巻き戻ることが出来るのがオッ!と思ったらEDスタッフロール見たら安心の合資会社ワムソフトの名前があってなるほど納得)
道具立てやテーマ設定がプレーンでアクが少ない分、キャラの魅力とそれを支える声優の演技の占める比重は高い。まずインパクトがあるのは、駄目妹っぷりを十二分に発揮している残念美少女な藍。原画がタコ焼き氏でかなり極まった残念なシスコンっぷりというところにはリアル妹の残影が仄見えますな。つか、所々で聴ける低音が効いたダミ声がどうにも白井黒子(しかも変態淑女の度合いがアップした超電磁砲のほう)を思い出してしまって困ったわ。そして藍とは別ベクトルで残念なのが天才肌でつかみ所がないトリックスター体質の桜。藤咲ウサの脱力しまくりな演技とここぞとばかりの半目ドヤ顔はマジでイラッ☆とくるわ(誉め言葉)。そんなふたりと比べると、夏海は一見するとベタなツンデレキャラのテンプレ通りのように見えるかもしれないが、そんな彼女の魅力は個別ルートに入ってからが真髄。長年秘めていた想いが叶えられた嬉しさのあまりにひとり悶え狂う姿がもう可愛くて可愛くて何度もリピートしてしまった。さすがの悠木姉妹クオリティー。アチ恋なんかもそうだけど、こういう突き抜け方をした時の五行なずなの演技の破壊力・突破力はとても素晴らしいよね、ほんと。
今回前面に押し出されている“青春”“青さ”“若さ”というテーマは調理方法が難しく、実際本作でもちょこちょこと首を傾げる箇所があった。無茶な局面を打破するための推進剤が登場人物(主に主人公)の精神的な未熟さ・若さに依っているのはどうなのかとツッコミを入れたくもなる。だが、そういう青さがあってこその青春だという言い方も出来るので、一概に否定しきれない。“青春”というテーマ設定は、ある一定のシチュエーションを切り取って短い尺で密度を濃く描いた方がその空気感を表現し易いはずだが(他ジャンルの小説や漫画とかでも短編の方が破綻してボロが出にくいよね)本作ではその意図は一定レベルで成功していたとは思う。
エロ成分が過去作と比較すると明らかに物足りないところは本作で一番残念な点だった。それはテキスト描写の薄さもさることながら、キャラの性向に根ざしたエロじゃない=凡庸なシチュエーションの普通のエロシーンに落ち着いてしまっているところが大きいのかなと思う。ていうかあんなにエロス溢れるウェイトレス姿の桜の脇コキシチュが無かったのは納得できねー。おるごぅる女史の生き霊はそういうエロシチュの拘り部分にこそ宿るべきだっただろう猛省しろ。過去作が結構ツボを突いてくるエロシチュが多く実用性が高かっただけに落胆の度合いも尚更。
良くも悪くもクセがないフラットな作風なので、過去作と比較した時に、おるごぅる(残念な妹)と保住圭(いちゃラブ)という「得意な作風が確立され、既にある程度の実績と評価を得ている」ライターに比べると今回担当の瀬尾順はその辺りのインパクトが弱い。そのため、いまひとつ歯ごたえに欠けるなあ、なにが強いアクセントになるものが欲しかったなぁと思ってしまうものの、全体的なバランスとしては悪くない……というかかなり良く、価格以上の価値は確実にあった。過去作とはちょっと違った方向性の作風でありながらも、基底となる部分の統一感は同じ匂いを感じるあたりは宮蔵プロデュースのラインのパッケージングの上手さが窺えるというもの。エピローグでタイトルバックを変化させることで「終わりよければすべて良し」的な爽やかな読了感を醸成させる演出はもはやハニカム文庫のお家芸。
おるごぅると保住圭だけだったら「ライター人気におんぶにだっこ」と揶揄されても仕方がなかっただろうが、既存作品で特段の実績がある訳ではない書き手を起用して(本作の内容を見る限り、今回の瀬尾順さんは地力はある人だと思うが)ここまでの作品に仕立て上げてくるあたり、宮蔵プロデュース作品の今までの好評価はフェイクやフロックではなく実力によるものだったと証明されたのではないだろうか。“ハニカム文庫”のレーベルイメージは本作で確固たるものになったと言えるだろう。当然ハニカム文庫レーベルの次回作にも期待しているのだけど、個人的な願望としては、今までのノウハウを生かして、メッセージ性の強いシナリオライターが描くコンパクトに纏まったストーリーものが見てみたいなぁと思ったりしている。
関連エントリ
哀しみの機械 - 『キッキングホース★ラプソディ』 コンプリート
哀しみの機械 - 『リアル妹がいる大泉くんのばあい』 コンプリート
哀しみの機械 - 『死神の接吻は別離の味』 コンプリート
スポンサーサイト
コメント