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『装甲悪鬼村正』 コンプリート

装甲悪鬼村正 -公式サイト
装甲悪鬼村正 - Wikipedia


めちゃくちゃボリュームがあるゲームなのに、ガチで2周フルプレイしてしまうくらいに面白かった。「善悪相殺」の題目をテーマにした、「スラッシュダークADV」を標榜するアンチヒーロー的な作品。敵を害意を持って殺すとその代償として愛する味方を斬り殺してしまうなんて、殊更に悲惨なシーンを演出しようとする趣味の悪いものになりかねないところだが、その陥穽に陥るのをギリギリのところで避けつつエンターテインメントとして成立させている。小説とかならともかくゲーム媒体ではえらく描きにくそうなこんなテーマをよく選んだと思うし、それを描き切っているのは賞賛に値する。話のまとまりとしては正直あまり良いとはいえないのだが、作中の事象をすべて最終的に「善悪相殺」というテーマに収束させていくことで、そのテーマに対する作中の結論を力ずくでプレイヤーが納得させられてしまうのは凄い。
大和というフィクション上の日本を舞台とした架空戦記的でもあり、和風ファンタジーっぽくもあり、(文明レベル的に)スチームパンクっぽくもあるという面白い(そして魅力的な)舞台設定だが、それを支えるのは破格な物語のボリューム。賛否両論はあるが、大ボリュームの物語が紡ぎ上げる「物語世界そのものの自立性」の効能というものは間違いなくあって、それを正しい意味で活用していると思う。昨年だったら『BALDR SKY』とか『Dies irae ~Acta est Fabula~』のようなタイトルも同様に大ボリュームを生かした物語になっているが、これはひとつの進む方向ではあるのだろうな。昨今のエロゲは規模がどんどん大きくなってしまい肥大化が進む一方であることは良くも悪くもあるのだけど。


とても長いゲームであるが故に登場人物の数もべらぼうに多いが、どのキャラも軒並み魅力的に描かれている。メイン格のキャラは元より、敵方の六波羅やGHQサイドのキャラがとても生き生きと描かれており、群像劇としての本作品の面白さに寄与していると思う。中でも雪車町一蔵が(中の人の演技コミで)気に入った。どれだけ小者臭い演技をしても、氷河流の地声の格好良さってのは消えないなあと苦笑してしまうが。

しかしそんなアクが強い連中を押しのけるレベルで、メインキャラのキャラ立てが独特で面白い。まず作中テーマである「善悪相殺」の揺るぎない掟を一身に背負う主人公である湊斗景明。己が境遇を諦めて受け入れてしまえば楽になるだろうに、それをしない(出来ない)性である景明だからこその悲喜劇なのだなあとつくづく思う。ただ暗く重苦しいだけではなく、そこにある種の天然さをまとった茶目っ気があるところがとても人間臭くて好きだ。
最初は声が屑兄さんと同じだからというだけで気になっていたけれど、プレイしてみると全然違う。電磁抜刀の時や劔冑の理を謳い上げる時、慟哭の叫びを上げる時の声が素晴らしくて男なのに濡れそうなレベルです。いやカッコいい。地の底を這うような暗黒星人な湊斗さんの声と優男イケメンな戒兄さんの声(あと木星の人)は全然違うよなあ。声優さんは偉大だ。

そしてメインヒロインである三世村正がめちゃくちゃ可愛い。可愛すぎて生きるのが辛い。ニトロプラスのゲームで、ヒロインが可愛すぎて辛抱堪りません早くエロシーン見せてください薄くても構いませんからと思ったのはこれが初めてかもしれん。三世村正といちゃいちゃ出来るだけのファンディスクがあったらフルプライスでも買ってしまいそうだ。つーか村正inメイド服での本番が無かったのは血涙ものですよ。蝦夷の格好の三世村正は嫁にしたいクラスの(よさげなエロ同人あったら買い漁りかねないレベルの)可愛さだけど、蜘蛛形態の村正のラブリーさはそれを凌駕しかねないな。それはそれでエロゲとしてどうかとは思うが。
可愛いだけでなく、劔冑として景明と共に戦えるヒロインであるということも燃えゲーのヒロインとしての強みだろうな。燃えゲーだと戦闘で出番がないキャラはどうにも空気になりがちだし。誰とは言いませんが。


演出も全体的に良い。その前に(ニトロプラス作品で)プレイした『スマガ -STAR MINE GIRL-』も良かったけれど本作はその更に上を行く。ともすればノリばかりで進みがちな“燃え”カテゴリに、物理法則(作中の言葉を借りれば“術理”)を取り入れた戦闘シーンは緊迫感があって楽しいし、劔冑同士の空中戦(双輪懸)はロボット同士のバトルというよりは、エースコンバット的な戦闘機のドックファイトっぽいノリで新鮮。劔冑に乗り込むと、画面がコクピットを思わせるようなコンソールに切り替わるのもツボにハマる。ニトロプラスの3Dポリゴンのビジュアルは(それこそPhantomの頃から)ウザったいから要らねえとずっと思い続けていたのだけれど、今作に関しては話の内容とも合致していて初めて良いと感じた。「電磁抜刀・禍」の3Dアニメーションシーンとか、傘で真似しかねないレベルで厨二ハートが疼く疼く。
縦書きの文章は読みにくくて最初は苛ついたがプレイしているうちに慣れてくるし、思っていたよりもワイド画面のレイアウトにはフィットしていた。テキストウィンドウが横に長くなると視線移動が疲れてしまうので、そのあたりも意識しているのかもしれない。

さすがにZIZZ STUDIOだけあって、楽曲はおしなべて高レベル。和楽器などを使いつつもその要素だけに頼らずに、作品世界を反映した和洋折衷な雰囲気を出しているのは上手。どの曲も良いんだけれど、「BLADE ARTS IV」がダントツでカッコ良かった。ボーカル曲もとても良いけれど演出での扱い方もまた上手くて、「疼(UZUKI)」「The Call」が掛かるタイミングとか、憎ったらしいくらいに上手ぇ。


ただまあ、これはどうなんだろうと思わされるところもちらほらと。まずゲームプログラムの挙動が全体的に重い。選択肢が出てくる場面で読み込みにワンテンポ待たされるってだけでも苛々するのに、2周目以降の周回プレイやバッドエンド大作で必要になる“超速”スキップが全然早くねえのはイラ壁レベル。頼むから章スキップとか場面ブロックごとのスキップを実装してくれ。これは『スマガ -STAR MINE GIRL-』をプレイした時にも思ったことだが、改善する気はないのだろうか。ニトロプラスは自社システムだろうと推測されるが、吉里吉里とかNScripter使った方がよっぽどいいんじゃねーのかオラ。

それともちょっと関連してくるが、本作品はとにかくデッドエンドが多い。ひとつのコマンド選択ミスでデッドエンドとか、敵手との戦闘中にそれ以降の戦闘手順を先読みでキャストしないと行けない(間違えるとデッドエンド)とか、一回でもミスると情け容赦なくバンバン死んでしまうあたりはもう「14へ行け」的なノリ。それだけに飽きたらず太古のコマンド選択式アドベンチャーっぽい展開になったり、テキストアドベンチャーのダンジョン探索っぽい展開になったり、ライマックスのバトル中に魔方陣パズルが挿入されたりと随所にギミックが仕込まれており……やっぱゲームブックっぽいなあ。どことなく作り手の趣味っぽいような雰囲気が無いでもない。
まあ、これはこれで、受動的になってしまいがちなシナリオの流れに攻略性を付与する試みであると言えなくもない。ただ、読み物としての魅力を損なっているのではないかという気持ちもあるし、今回のクソ重いシステムでこのように頻繁に選択肢やセーブ&ロードを繰り返してると、プレイしていていちいち引っ掛かるのが鬱陶しくてたまらない。ゲームブック的なデッドエンドが許容されるのは、失敗してもすぐにリトライできてトライ&エラーを容易に繰り返せる場合に限ると思うのだがどうだろうか。(他社になるが『蠅声の王』などは元々“デジタライズド・ゲームブック”と銘打ってそういう設計のADVゲームとして作られていたし)

それから、(この手のジャンルものの宿痾だが)ヒロインを攻略する必然性に欠ける。単純にヒロインとくっついてキャッキャウフフな話になりはしないのは作品の傾向から問題にはならないとしても、“他者に必要以上の好感を持つこと”の心理的な敷居が高い(そう意識せざるを得なくなった)景明が、「ヒロインに後戻り出来ない好感を持つようになった経緯」についてはもう少し丁寧に描写してほしかったと思う。どのルートにおいても、その“ヒロインを選んでしまった”結果が「善悪相殺」という題目と絡んでその後のシナリオ展開に繋がっていくので、そうなる切っ掛けについてはもっと描写を割くべきだったのではないだろうかというのは3ルート(+1)を通して気になり続けた。


とまあ難点を口にしたけれど、そんな不満点には目を瞑ってもいいやと思わされるくらいに面白かった。ニトロプラスは一番最初のPhantom(Directorで動いてた奴)からキャッチアップしていて、なんだかんだで継続的にプレイしてはいるんだけど、そこに通底する雰囲気にどうにも苦手意識を持っていた…というかぶっちゃけあんまり好きじゃなかった。言うなれば、開店当初から食べたことあるラーメン屋に「あの店のラーメン、匂いが苦手だし麺もイマイチ好みじゃないんだよなー」とか言いながらも何故かちょくちょく通っているような感じ。
そんなお世辞にも良いユーザーとは言えない自分であるにも関わらず、ここまでのめり込ませてしまう作品が持つ力には感服するしかない。力業でねじ伏せられたという気分でぐうの音も出ませんわ。今まで自分がプレイしたニトロプラスのゲームの中では一番好きです。いや参りました。
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