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『アッチむいて恋』 コンプリート


腹を抱えて大笑いするというほどではない、明るく軽い(重くならない)良い意味でのバカゲーなノリが気に入った。エロゲーであることを逆手に取ったメタ的なギャグ(メッセージウィンドウのスクリーンショットを撮って「これが証拠よ!」と見せつけるとか、全員の集合絵に登場しないキャラを「見えてませんよね?」と弄るとかいろいろ)が多いが、この手のメタネタにありがちなサムさを感じさせないのは偉い。というか、どんな声が好きか?というネタフリに対する選択肢で「松田理沙さんっぽい声」「五行なずなさんっぽい声」「北都南さんっぽい声」という項目が出てきた時には本気で噴き出した。

キャラ造形や声優の演技についてはどのキャラも非常に良いけれど、特に素晴らしいのは織葉朱@五行なずな。男嫌いでヒステリックなツンデレで声が五行なずな……といえば日和子さん@俺つばや愛理@ましフォニを連想する人が多いだろうが、ちょっとしたことで妄想しては「いやらしッ」と過剰に反応したり「あるわよー!!あたしのオ○ニー歴知ってんのかこのバカタレ~!」とか叫び出したり、一応シリアスな場面のはずなのに謝罪の言葉を「バウアー風に言って」と言い出したり静謐な神社で「おっぱいおっぱい」連呼したりと完全にヨゴレヒロイン。だがそんなヨゴレっぷりと空回りっぷり、勘違いっぷりこそがキャラの魅力に繋がっており、大変に可愛い。

それに負けず劣らず凄いのが八乙女優由@遠野そよぎ。当初はただの御邪魔虫的なウザいヒロインにしか見えないキャラなのに、個別に入るとその魅力が爆発。ピンク髪でハイテンションで後輩で日常的に下ネタを連発するという、普通だったらどうやっても不人気ヒロインの誹りを免れないようなキャラ造形なのに、その“恋する乙女”への変貌を描くシナリオの巧妙さと演技の上手さで他キャラをぶち抜いて二番手に付けるくらいに素晴らしい。特筆すべきは遠野そよぎの演技。それまでのイメージとは離れた役柄ということもあって、事前情報一切無しでは彼女が演じているとは気付かなかったはず。彼女はこのブランドの過去作でもかなり活躍しているようなので、今更ながらに欲しくなってきた。

朱・優由の個別ルートは、入寮もののワイワイガヤガヤとした雰囲気や家族的な連帯感を前面に押し出しながら、朱ちーのトラウマ(笑)が解消されて男に溺れるエロヒロインと化したり、ゆーゆの恋心がどんどん大きくなっていく様を描き出している。そのシナリオの筋はそれほど図抜けたものではないしボリュームもそれなりだけれど、共通ルートの雰囲気を引き継いだまま軽く明るいテンションで終始進行していくので、プレイしていて不快感を覚えることが少ない。
「女装もの」としてのシナリオはあまり良いものではないし設定にも無理がありすぎるが、“女装して女の園に潜入”というシチュエーションよりは、どちらかというと「男と女という双方の立場から、ヒロイン勢の別の一面を垣間見える」ことこそが今作におけるメインであろうから、それほどの問題ではないだろう。


……だが、残りのルナ・かぐや・美奈子の3シナリオはクソつまらなくて擁護できない。ルナは「妹との禁断の愛」かぐや先輩は「幼少期の家族との別れのトラウマ」美奈子は「誤解と行き違いから来る愁嘆場」というエロゲのテンプレ展開から一歩も外れておらず、たぶんCtrlキーでシナリオすっ飛ばしても内容把握できるんじゃないかってくらいに意外性がない。ウザいくらいに絡んできたメイン以外のキャラクターの出番が減り、それまでのバカみたいな軽さからしたら信じられないくらいに重い設定が連発し……別のゲームでやれ、別ので。なまじ共通ルートや他ルートが半端じゃなく面白いだけに、よけいにその落差が気になってしまう。
オフィシャルサイトのスタッフ日記を読むと、メインライターが広報とディレクターを兼任していて朱と優由のルートしか執筆できず残り3ルートを他のライターに回したのが原因のひとつの様子。このゲームの面白さはメインライターの人が持っている(都合の良い言葉になってしまうが)センスによるものが大きいと見受けられるので、どうせなら攻略キャラを減らしてでも個々の完成度を上げて欲しかった。

チンコが異次元レベルに大きくてこんなビッグコックをチア姿の下に隠せる訳ねえだろうとか、美奈子の一部CGはちょっとふっくら気味ってレベル越えてねえかコレとか、(これは朱・優由ルートでも共通している欠点ではあるが)CGのバラツキの多さも気に掛かる。
エロシーンのショボさにもガッカリした。メーカーは猛省しろ。朱ちーのフェラシーンとか優由の逆まんぐり返しとかかぐやの女装姿で69とか、CGとかシチュエーションはいいのにテキストが酷くて台無しだ。特に朱ちーの机の下でのフェラ!声は五行なずなだし、蕩けきった表情がエロくてヤバいのに、なんであんなにしょっぱいテキストなんだよ……


と、減点方式で評価するならば貶すところてんこ盛りなのでかなり辛い採点となってしまうのだが、このタイトルならではの魅力があるという点で「好き」か「嫌い」かといえば間違いなく好き。大好き。この独特の雰囲気はクセになる。自分は体験版をプレイして琴線に触れたから購入したけれど、その読みは正解だったと今にしてみれば思う。このゲームの面白さのエッセンスは体験版部分だけでも感じ取れるから、それが気に入るかで判断して間違いないんじゃないだろうかと。
それから、五行なずなか遠野そよぎのファンならばプレイすべき。両方のファンなら今月の新作を一本諦めてでも買うべき。いやマジで。

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