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『WHITE ALBUM 2 -introductory chapter-』 コンプリート

WHITE ALBUM2 -introductory chapter-

一言で言ってしまえばショコラにおける大介・香奈子さん・翠の高校時代とか、パルフェでの仁と里伽子の初代ファミーユが健在だったころのエピソードといった「丸戸ゲーにおける回想シーンを先行して見せました」という内容で、全体的に描写がおそろしく丁寧で隙がない。

丸戸史明はもともと構成の上手さには定評があるけれど、選択肢による分岐がないことと登場人物が少ないことによってその密度が鬼のように上がっている。巧みな会話のキャッチボールで楽しませつつ短いタームでオチを付けることでテンポ良く話を進めていくという丸戸の手法は今作でも健在。ホワルバという作品の傾向を意識しているのか、いままでと比べるとパロディは控えめ(「ここがあの女のハウスね」なんて大ネタを使ってるけれど、原典を踏まえた正しいパロディのあり方と言えなくもない)。テキストの随所に前作との関連性を匂わせていることは、丸戸のホワルバへのリスペクトの精神を感じさせるには十分。

物語はおおまかに「交流を深めつつ文化祭でのバンド演奏を成功させる」前半と「仲良し三人組のうち二人が恋愛関係になってしまい不協和音が生まれる」後半に別れているが、前半部分での三者が思いを深めていくさまの描写がとても丁寧で計算しつくされており、過去の丸戸ゲーでの過去エピソードのような無理矢理っぽさは感じにくい。ゆえに後半での人間関係が拗れていってしまうところでのやるせなさが際立つのだけれど、その三角関係の崩壊も春希とかずさと雪菜の3人が等しく「互いに誠実であろうとしながら、狡くなってしまった」が故の結末なので、誰かを恨めばそれで済むわけではないという話の落し所がきわめて巧妙。結末ありきの展開が鼻に付くきらいもあるが、見せ方が上手いので(あと俺は丸戸信者なので)それほど気にはならない。
「二周目以降のプレイで開放されるシーン」と「初回特典の小説」で追加の情報を与えることで、本編の描写に張り巡らされた伏線に気付かせてうわあああああ(AA略)とさせるお馴染みの手法も卑怯さすら感じるくらいに上手でぐうの音も出ない。

音楽も良い。Leafブランドだけあってどの曲も高いクオリティではあるけれど、やはり「あの頃のように」「FILL YOU」などの前作で使われた楽曲が印象に残る。予想通りとはいえ「WHITE ALBUM」「SOUND OF DESTINY」を文化祭で歌ったり、「POWDER SNOW」のインストを“別れた相手をずっと想ってる歌”として重要な局面で使うところはファンならずともグッと来る。「届かない恋」をはじめとしたボーカル曲も、ゲームの内容と合わせて気に入った。


不満点は大きく2つ。まずは原画の問題。立ち絵の服装のバリエーションが馬鹿みたいに豊富だったり背景が綺麗だったり演出が良かったりはするが、肝心要の一枚絵に微妙なものが多すぎる。F&C時代からなかむらたけしの絵は大好きだが、そんな信者アイを通してすら擁護しきれないくらい。しかも枚数も少なくCGモード読みで差分無しの27枚。もともと村様は不安定さと遅筆さに定評がある人ではあるけれど、それにしても酷い。CGの見せ方としての演出の面でも、強制オートモードが地味にウザったくてイライラさせられる。テキストと音の同期の問題などがあるし演出意図としては分かるのだが、そうポンポンと多用されるとプラスよりもマイナスの方が目立ってしまう。

それからボリュームおよび価格の問題。最初から序章と銘打ってはいるし尺はそれなりにあるしボーカル曲も豊富だしシナリオは読み応えがあって何も不満はないのだが、選択肢無し一本道ルート固定エロシーン1回のプレイ時間10時間前後の内容に対して初回版定価5800円というのはちょっと割高感がある。商魂たくましいLeafだから現実的ではないけれど、以前『君が望む永遠』なんかがやっていたように導入部をまるごと体験版として無償配布してしまっても良かったような気もする。(そーいや君望も浮気・修羅場ゲーだったな。心底性に合わなかったが)


前作はほぼリアルタイムでプレイした。音楽はツボにハマって折に触れて聴き返していたし、ED曲の「POWDER SNOW」はエロゲのボーカル曲の中では十本の指に入るくらい好きだけれど、ぶっちゃけ作品そのものへの思い入れは無い。だがそんな自分でも“WHITE ALBUM”としてはこれはどうなんだろうという気持ちはある。ファンではない自分にとっても印象的だった前作の茫漠とした冬の空気感は本作には(序章の展開の中では)無かったから。

だが、“丸戸史明の最新作”としてはつづくclosing chapterには多大な期待を寄せている。戯画での新作は絶望的らしいし、HERMITブランドでは趣味に走りすぎた結果になることが多いし、これ以外はコラボ企画の『太陽の子』になってしまうからなあ……。発売が何年後になるかは分からんが、期待しつつ待ちたい。
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