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小太刀右京 『マクロスFRONTIER』 全4巻

マクロスフロンティア Vol.1 クロース・エンカウンター
マクロスフロンティア Vol.2 ブレイク・ダウン
マクロスフロンティア Vol.3 アナタノオト
マクロスフロンティア Vol.4 トライアングラー

劇場版が公開されたのでまとめて読み返した。普段は主にTRPG業界で活躍する小太刀右京によるマクロスFRONTIERのノベライズ。
このノベライズ、最初こそ挿絵につられて買ったものの、ついつい引き込まれてしまった。小説という心情描写や背景説明に適した媒体の強みを生かして、数多い登場人物の内面やバックボーンを丁寧に描いており、原作アニメでは描写/説明が不足していて苛々とさせられた部分が相応の説得力を持って見えてくる。しかも作者の完全オリジナルというわけではなく、原作者である河森正治の監修のもとで書かれていることも説得力を高めている理由のひとつ。

たとえば物語中盤でのランカの裏切りなどは、アニメではあまりに突拍子がない展開に唖然としたしランカのウザったさには辟易させられたが、小説ではバジュラという生命体と共感できる心優しいランカという少女はそうする他なかったのだ(そしてそんな心優しいな少女だからこそ物語終盤におけるバジュラと人類の共闘の架け橋となれたのだ)という必然性を帯びてみえる。
敵役となる17歳…もといグレイス・オコナーなども、本編では何故そのような行動を取るに至ったのかについての説明が致命的に不足していたため、話を推し進めていくためのただの仕掛けでしかなかったが、そのあたりもグレイスには彼女なりの動機と渇望があったのだと描写されており、物語に深みを与えていた。

一番の変貌を遂げたのはやはり主人公である早乙女アルト。あっちにフラフラこっちにフラフラと苛々させられた言動に「女形として“女性”であることを求められていたため、男としての自分のアイデンティティを確立できずにいる」「呼吸するように自然に“演じる”ことが出来る天才であるがために、自分自身の本当の感情がどこにあるのかが分からない」「その“場”(もしくは人)に求められる役柄を無意識のうちに演じきってしまう」という理由付けをしたことには感心した。
さらに、天才的な役者であること(=身体操作や空間把握の能力が極めて高いこと)を身体の動きと連動するEXギアの設定と絡めて、アルトが短期間でエース級パイロットの力量を身につけ要所で神懸かり的なバルキリーの戦闘機動を行えたことの根拠としているのも上手だ。作者は伝統芸能に造詣が深いのか、随所に差し込まれる歌舞伎についての蘊蓄がいちいち面白く、なるほどそういうこともあるのかもしれないなとついつい丸め込まれてしまう。歌舞伎の伝説的な女形だったという設定を、(本編と酷く矛盾しないように留意しつつ)ここまでうまく広げてくるとは恐れ入った。

作者はマクロスシリーズのかなりなファンであるようで、随所に織り込まれた小ネタの深さに感心させられる。なんせ統合政府側のキーキャラとしてエイジス・フォッカー(ゲーム版VF-Xの主人公)が出てくるくらいだ。4巻終盤で、“砂漠の果てで歌い続ける丸メガネのシンガー”だの“マクロス7船団のダイヤモンド・フォース隊長”だの“惑星エデンの不良飛行機乗り”だのが登場した時には思わずニヤニヤと。マクロス13の艦長がキムだったことには大笑い。

総じてアニメ版の不満点を上手い具合に掬い取っており、文章力も過不足ない。解釈の違いによる好みなどはあるだろうが、この手のノベライズとしては理想的なもののひとつと言ってよいと思う。アニメ本編の展開に不満を持った人ほど高く評価をできるんじゃないだろうか。オススメ。


なによりも、あからさまにシェリル贔屓なのがいいよ(笑)
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