劇場版 マクロスF 虚空歌姫~イツワリノウタヒメ~ポコッと休日が出来てしまったので、少し遠くの上映館まで行ってマクロスFの劇場版を鑑賞した。本当は
魔法少女リリカルなのは The MOVIEを観ようかと考えていたのだが、公開してすぐでえらく混雑してるっぽいので回避。
今回が2回目の鑑賞になるけれど、(テレビ版の総集編だから仕方がないとはいえ)物語としてはまとまりが悪いなあと再認識。デザインとコンセプトを作り込むセンスは当代屈指だけどそれを分かりやすく作品中で表現するスキルは微妙な河森正治と、思わず釣られてしまうフックを仕掛けるのは名人芸だけど広げた風呂敷は畳ま(め)ない吉野弘幸のコンビに真っ当なストーリーを求めるのは間違ってるのかもしれないが。
だが、そもそも初代の『超時空要塞マクロス』から物語性なんてのは皆無だったわけで、では何がマクロスのキモかというと「アイドルの歌」「バルキリーの戦闘」「男女の三角関係」というみっつの要素。それさえ軸から外さなければ“マクロスとしては”成立してしまうというのはテレビ版最終話でも証明されてしまっているが、そういう意味では極めて正しい「マクロスの劇場版」と言える。
まず三角関係でいうと、テレビ版に比べてキャラが全体的に大人に設定したことで、作劇でイラッ☆とさせられることがあきらかに減った。特にランカは、「元からアルトと知己だった」と設定変更されたことと中の人の演技力が向上したこととで、テレビ版に比べて格段に魅力が増していたのが新鮮だった(コンビニの下りは宣伝臭さバリバリでどうしようかと思ったけれど)。主役のアルトも、家業の歌舞伎に対して抱いている葛藤を作中で上手く組み込んで一貫性に欠けてペラかったキャラ性を底上げしていたし、戦闘においても初戦のはずのギャラクシー防衛戦でマックスばりの獅子奮迅の大活躍を果たしていて、テレビ版で不満に感じたところがかなり改善されていた。
そして文句無しのメインヒロインであるシェリルは相変わらずいい女過ぎる。テレビよりもプロフェッショナルであるということを強調されていた分、年相応の少女の素顔とのギャップが激しすぎて愛しすぎてもうたまりません。イヤリングやアイモ絡みの設定がリファインされたことで、テレビ版よりも話の中核に食い込めるようになったのも大きい。ただ今回あまりにシェリルが大きくクローズアップされすぎていたので、今後公開予定の完結編でどういう扱いをされるのかが不安にもなるけれど。
そして音楽。劇伴の曲も軒並み高品質だけれど(さすがは菅野よう子)新録のボーカル曲の良さがやはり目立つ。前半の「ユニバーサル・バニー」もいいけれどなにより後半クライマックスで流れる「オベリスク」が神の領域。あと、ランカの怒濤のCM曲ラッシュが微笑ましくて良かった。完結編で「星間飛行」「ノーザンクロス」がどう使われるのかが今から楽しみでならない。
作画については、冒頭のシェリルライブからしてテレビ版よりもパワーアップしていたが、とにかく後半の戦闘シーンが圧倒的すぎる。「オベリスク」に「ライオン」とボーカル曲大盤振る舞いにシェリル&ランカのデュエット、アルト無双に夢の共闘にまさかのマクロスアタックまでをフルコースで持ってくるとは思わなかったよ。特にアルト無双をはじめとするバルキリーの戦闘機動が、アニメーションの快楽のツボをバシバシ押してくるんだこれが。個人的にはマクロスプラス4話の板野サーカスがバルキリーでの戦闘の最高峰だと確信して疑わないんだけれど、それとは別方向での気持ちよさがあった。
所謂“映画の造り”になっているかといえば(元々がテレビ版の再編集だし)全然ダメだけれど、ハイクオリティの歌曲と血湧き肉躍るバルキリーの戦闘をシネコンの大迫力のスクリーンと整った音響設備で「体感」するのが楽しいっていう点では、とても良い「劇場版」になっていると思う。これは多分、Blu-rayが出て家庭で鑑賞しても、あまり面白くないんじゃないだろうか。(だからこそわざわざ遠出して2回目観たんだけれど)これは昔、マクロスプラスの劇場版を観たときにも思ったことだが、歌とバルキリー(と三角関係)っていうある意味ハリウッド的なマクロスの訴求ポイントと、劇場っていうフレームは親和性が高いのかもしれないな。