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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」 書籍化計画

『魔王勇者』書籍化計画……だとっ!? - 敷居の先住民
Togetter - まとめ「桝田省治氏による『魔王勇者』書籍化プロジェクト進行中」
(14) #maoyu - Twitter Search

完結してから時間が経った最近になって、ブログなんかで頻繁に取り上げられるようになり人気が出てきた魔王(略)の書籍化計画が進行中とか。これでどこぞの胡散臭い山師が先に立っていたならば複雑な心境になっていただろうが、発起人が桝田省治ということには手掛けた作品の傾向から納得…というか腑に落ちた。

#maoyu 個人的には「丘の向こうにあるものを見てみたい」という言葉が好きだ。僕が寸評で書いた言葉なら「可能性」だろうか。そういう意味で、僕は本作を、2ちゃんの同好ノリや既存のRPGの文脈を知らない人がいるだろう「丘の向こうに」連れて行きたいんだ。これ、僕の基本方針ね


という桝田氏の発言は素敵だと思うので、作品にとって幸せな展開になることを期待したい。“より幅広い人たちに受け入れられるために”どのような改変が為されるのかというのも興味深いところ。しかも今なら、現在進行形で執筆されている橙乃ままれ氏の新作 『ログ・ホライズン』も合わせて楽しめるから二倍美味しい。
しかし、この祭りを最初から見物できなかったのが返す返すも悔やまれるな。かったるそうだから敬遠していたけれど、Twitterを始めてみようかしら。



余談だけれど、Togetherのタイムラインまとめでの作者の発言を読んでいて思い出したことがあって。それは、魔王勇者がドラゴンクエスト(ロトシリーズ)の存在を前提に置いた二次創作というのはそのタイトルも含めて広く知られているのだけれど、(話題が広まってきた現在でも)久美沙織が執筆した小説版『ドラゴンクエスト 精霊ルビス伝説』を世界観の下敷きにしているというのはあまり認知されていないのだなあということ。

自分としては、当初は「良く出来たパロディ小説」くらいにしか思っていなかったものが次第に装いを変えていき、本当に「丘の向う側」の景色を見せてくれる素晴らしいものになりそうだと気付いてからは、二次創作うんぬんはすっ飛ばして素晴らしい出来の完全オリジナルストーリーとして物語を受容していたわけで。
ところが中盤になって“忘れ去られた古のオーブの伝説”が語られ、“炎の”カリクティスという単語が出てきた瞬間の驚きといったら! これは読み手の共通認識を逆手に取ったところから物語を始めるためにタイトルネタを題材に選んだだけではなく、ドラゴンクエストという偉大なる定型の物語に敬意を払ったうえで、その物語が描く向こう側を目指そうとしているのかと。最終章で語られるこの世界構造の成り立ちには、あの崩壊の時に火口に沈んだディアルトとダトニオイデス、そしてルビスの魂は遙かな時の果てにここに辿り着いたのかと思うと誇張抜きで震えた。

これは『モンスター物語』あたりから始まるエニックスの最初期の出版事業をリアルタイムで通過して、精霊ルビス伝説(というか久美沙織によるDQノベライズ)に少なからぬ思い入れがある自分だからこその感慨なのかもしれないけれど、もう少し広く知られてもいいんじゃないかなーと思う。出版当時のドラクエの勢いとかを考えれば、特に意識はしていなかったけど実は読んでいました、みたいな読者も結構いるだろうし。
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浅倉久志 死去

浅倉久志氏=翻訳家 : おくやみ : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
SF翻訳家・浅倉久志先生 逝去|お知らせ|東京創元社
浅倉久志 - Wikipedia

…………マジか。出たばかりの「SFハンドブック」を頼りに古典名作を読み始めた小学生の頃、印象深い作品はだいたい伊藤典夫か浅倉久志、矢野徹あたりが訳していて、特に浅倉訳はハズレが少なく「翻訳者買い」が出来る人だった(そういえば、近年でもテッド・チャンの「あなたの人生の物語」なんかを訳していたっけ)。当時少ない小遣いで欲しいタイトルをやり繰りする時には最優先で買っていたものだ。たぶん自分のような読み手は他にもたくさんいることだろう。
翻訳の作法については色々と議論されることもあるけれど、ティプトリーの「The Starry Rift」に「たったひとつの冴えたやりかた」という邦題を付ける素敵なセンスを楽しめることは、自分が「日本語で海外SFを読むこと」で最初に惹かれた要素だったので、その意味では自分にとってのSFを読む象徴のひとりだったのかもしれない。ご冥福をお祈りします。

ハヤカワJAの新刊

MF文庫J、GA文庫、etc - 2010年1月刊 - ラノベの杜

ハヤカワ文庫JA
1/上旬発売
●レダ1 【著:栗本薫】
●レダ2 【著:栗本薫】
●レダ3 【著:栗本薫】


なんでいまさら再販するんだとは思うものの、本屋で見かけたらフラフラと買ってしまいそうだ。後年の醜態はともかくとして、この時期の栗本薫には色んな意味で影響を受けすぎていて未だにぬぐい去れない。ハヤカワから出ていたSFものは、今読み返すと元ネタがあからさまに透けて見えることに苦笑してしまうけれど、それでも優れた青春小説でありリリカルなSFであることは間違いないと思う。
気になるのは挿絵がどうなるのかということ。個人的には文庫版でのいのまたむつみに慣れてしまっているので。


あと、1月のハヤカワの新刊で、何気に榊一郎の名前があることに驚いた。ガンパレとか読んでるけど、早川レーベルから出るSFを書ける人というイメージは持ってないからなあ。

小太刀右京 『マクロスFRONTIER』 全4巻

マクロスフロンティア Vol.1 クロース・エンカウンター
マクロスフロンティア Vol.2 ブレイク・ダウン
マクロスフロンティア Vol.3 アナタノオト
マクロスフロンティア Vol.4 トライアングラー

劇場版が公開されたのでまとめて読み返した。普段は主にTRPG業界で活躍する小太刀右京によるマクロスFRONTIERのノベライズ。
このノベライズ、最初こそ挿絵につられて買ったものの、ついつい引き込まれてしまった。小説という心情描写や背景説明に適した媒体の強みを生かして、数多い登場人物の内面やバックボーンを丁寧に描いており、原作アニメでは描写/説明が不足していて苛々とさせられた部分が相応の説得力を持って見えてくる。しかも作者の完全オリジナルというわけではなく、原作者である河森正治の監修のもとで書かれていることも説得力を高めている理由のひとつ。

たとえば物語中盤でのランカの裏切りなどは、アニメではあまりに突拍子がない展開に唖然としたしランカのウザったさには辟易させられたが、小説ではバジュラという生命体と共感できる心優しいランカという少女はそうする他なかったのだ(そしてそんな心優しいな少女だからこそ物語終盤におけるバジュラと人類の共闘の架け橋となれたのだ)という必然性を帯びてみえる。
敵役となる17歳…もといグレイス・オコナーなども、本編では何故そのような行動を取るに至ったのかについての説明が致命的に不足していたため、話を推し進めていくためのただの仕掛けでしかなかったが、そのあたりもグレイスには彼女なりの動機と渇望があったのだと描写されており、物語に深みを与えていた。

一番の変貌を遂げたのはやはり主人公である早乙女アルト。あっちにフラフラこっちにフラフラと苛々させられた言動に「女形として“女性”であることを求められていたため、男としての自分のアイデンティティを確立できずにいる」「呼吸するように自然に“演じる”ことが出来る天才であるがために、自分自身の本当の感情がどこにあるのかが分からない」「その“場”(もしくは人)に求められる役柄を無意識のうちに演じきってしまう」という理由付けをしたことには感心した。
さらに、天才的な役者であること(=身体操作や空間把握の能力が極めて高いこと)を身体の動きと連動するEXギアの設定と絡めて、アルトが短期間でエース級パイロットの力量を身につけ要所で神懸かり的なバルキリーの戦闘機動を行えたことの根拠としているのも上手だ。作者は伝統芸能に造詣が深いのか、随所に差し込まれる歌舞伎についての蘊蓄がいちいち面白く、なるほどそういうこともあるのかもしれないなとついつい丸め込まれてしまう。歌舞伎の伝説的な女形だったという設定を、(本編と酷く矛盾しないように留意しつつ)ここまでうまく広げてくるとは恐れ入った。

作者はマクロスシリーズのかなりなファンであるようで、随所に織り込まれた小ネタの深さに感心させられる。なんせ統合政府側のキーキャラとしてエイジス・フォッカー(ゲーム版VF-Xの主人公)が出てくるくらいだ。4巻終盤で、“砂漠の果てで歌い続ける丸メガネのシンガー”だの“マクロス7船団のダイヤモンド・フォース隊長”だの“惑星エデンの不良飛行機乗り”だのが登場した時には思わずニヤニヤと。マクロス13の艦長がキムだったことには大笑い。

総じてアニメ版の不満点を上手い具合に掬い取っており、文章力も過不足ない。解釈の違いによる好みなどはあるだろうが、この手のノベライズとしては理想的なもののひとつと言ってよいと思う。アニメ本編の展開に不満を持った人ほど高く評価をできるんじゃないだろうか。オススメ。


なによりも、あからさまにシェリル贔屓なのがいいよ(笑)

ガガガ文庫 12月の新刊

ガガガ文庫 - 2009年12月刊 - ラノベの杜

●アイゼンフリューゲル2 【著:虚淵玄/絵:中央東口】
●風に乗りて歩むもの 【著:原田宇陀児/絵:ringo】
●ささみさん@がんばらない 【著:日日日/絵:左】
●とある飛空士への恋歌3 【著:犬村小六/絵:森沢晴行】
●放課後のエスケープ・ヴェロシティ (仮) 【著:大木連司/絵:しずまよしのり】
●夜が来るまで待って 【著:小木君人/絵:梅原えみか】


おお、恋歌の3巻が出るのか。期待半分不安が半分、というのが正直なところだけれど、とりあえずは買う。
虚淵玄のアイゼンフリューゲルは予想以上に早いペースで新刊が出るようで嬉しい限り。しかし、ファントムを最初にプレイしたときはこんなに器用な書き手だとは思わなかったが……化けたよなあ。

犬村小六 『とある飛空士への恋歌 2』

とある飛空士への恋歌 2 (犬村小六 / 小学館ガガガ文庫)

テコ入れなのか構想通りなのかはともかく、一気に学園ラブコメ色が強くなった第2巻。本格的に物語が動き出すまえの平和な楽しかった時期を演出しようとしているのだろうけれど、その目論見は成功しているとは言い難い。
この作者の、『レヴィアタンの恋人』でもうすうす気付いていた軽妙な会話の上手でなさ(婉曲的表現)には目を瞑るとしても、モブキャラの寒すぎる言葉遣い(いまどき語尾に“ッス”とか“ごわす”はどうよ) やあまりに現代日本の日常に近すぎる食物(前巻でも気になったけどラーメンって!カレーって!!餅って!!!)とかには耐えられない。ほんと勘弁してください。
特に食材とかが現実に近すぎることは、島サイズの空中要塞や自力補給可能な水上機や未踏の“空の果て”といった、(手垢にまみれてはいるが)魅力的な舞台設定を崩壊させてしまう危険性を孕んでいると思う。ラノベだしそこまでガチガチに拘るつもりもないけれど、どちらかというとシリアス志向のシリーズだから、この辺の脇の甘さは残念だった。キャラ萌え系やギャグ系ならハナから何も言わん。

でも、『~追憶』のベタで分かりやすいけど、それゆえに甘く切ない恋物語がなんだかんだで大好物な人間としては、今後の展開はやはり気になる。前回のモチーフが「ローマの休日」で今回が「ロミオとジュリエット」らしいと聞けばなおさら。クレアとカルエルがぎこちなくも少しずつ心を通い合わせているさなかに、カルエルの正体にクレアが勘付き始める(悲劇の予兆が見える)というのはもっと話が進んでからだろうと予想していたので、こんなに早い段階からというのは意外だった。
思惑ありげな提督や最後に出てきた神聖レヴァーム帝国の存在(『追憶』と本格的にリンクするのか?)も気になるし、次巻でどう化けるかが楽しみだ。


あ、『レヴィアタンの恋人』を読んでいる読者としては、寮長のナチュラルすぎる登場に吹いた。スターシステムですかコラ。

『GOSICK』 再始動


GOSICK: 文庫: 桜庭一樹 | 角川書店・角川グループ


いまや直木賞作家になってしまった桜庭一樹の出世作が復活。お亡くなりになった富士ミスにかわってどこのレーベルに行くかと思ったら……角川文庫か。
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』から一般文芸に主戦場を移したことから想定された路線ではあるけれど、武田日向のイラストが取り除かれそうなのはちょっと寂しいな。イラストがなければ読めないとか言うつもりはさらさらないけれど、ヴィクトリカのあのビジュアルインパクトは大きいし、武田女史の柔らかなトーンが作風を決めている側面もあったんじゃないかと思うので。

それでも、どっかの異次元騎士カズマみたいに忘れ去られることなく再始動してくれたことは素直に喜びたい。今の一般文芸路線も楽しく読んではいるんだけど、ラノベのフィールドだからこその魅力というのもやはり捨てがたい。

SH@PPLEドラマCD

ドラマCD SH@PPLE【限定版】 - MARINE ent. Online Shop

淡谷雪国・淡谷舞姫:井上麻里奈
一駿河蜜:釘宮理恵/蝶間林典子:遠藤綾
久我原さゆね:伊藤静/古葉鳥子:小清水亜美(他)


雪国/舞姫は井上麻里奈とな。確かにショタ声もボーイッシュな少女もこなせる人ではあるけど、今ひとつキャラと結びつかないな。あと胡蝶の宮が遠藤綾というのはどうにもシェリル・ノーム@マクロスFを連想してしまう。原作は結構好きなんだけど、コミケor通販のみというのが微妙なところだ。

そしてここまで書いて、今日が富士見の新刊発売日ということに気がついた。今月はSH@PPLEもそうだが、百合でSFで石川賢な瀬尾つかさの新刊も出るんだった。忘れないうちに捕獲しないと。