Dies irae ドラマCD 「Todestag Verloren」

Dies irae ドラマCD「Todestag Verloren」 | MUSIC | Dies irae Portal Site

Dies iraeのアニメ化企画に伴う再始動展開の第一弾として、新たなドラマCDが発売された。コンテンツを再び転がすための助走期間というか、準備も兼ねてという意味合いを多分に含んでいるであろう今回のドラマCD。今回描かれたのはかつてのカップリング人気投票でも評判が高かったマキナ(ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン)とロートス・ライヒハートの2人を主軸に、グラズヘイムでふたりが雌雄を決して「聖槍十三騎士団が全員揃ったとき」のこと。ただ、それは今まで描かれていなかった情景ではあるものの、既存の情報から推測可能であって衝撃の新事実が隠されているという訳でもなかったので、どことなしの消化試合感があるなと思わされてしまったのが残念でならない。このエピソード自体はファーブラの頃から待ち望んでいたものであるだけに。
ついでに言えば、CGと文章というイマジネーション想起の補助がないところで音声とSEだけでバトルが展開することには、迫力の無さというか、端的に言って”燃え切らない”感があり、ドラマCDという媒体の限界を感じずにはおれない。これは今回に限らず以前のドラマCDでも感じたところではあるとはいえ、表現媒体を変更することの難しさということをあらためて認識することにもなり、アニメ化に対しての懸念事が増えたといえなくもない。

……だがそれでも、あのBGMにあの声優陣があのキャラクター達にあらためて声を付けているというその事実だけで、不覚にも心が沸き立ってしまったことも事実であるとは認めずにはおれない。Dies iraeというコンテンツのポテンシャルというか、キャラクターにもそれを演じる声優陣にもその舞台背景にも大きな力があるということをあらためて再確認させられてしまい、正田の術中にまんまとハマってしまったようで悔しいったらありゃしない。以下雑感。
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『Dies irae』アニメ化プロジェクト終了記念 スペシャルムービー公開

Dies iraeアニメ化プロジェクト
美少女ゲーム「Dies irae」アニメ化プロジェクト 1日でクラウドファンディングの目標達成 - ねとらぼ

Dies iraeのアニメ化を支援するクラウドファンディングの出資者特典として、限定公開のデモムービーが公開された。Dies iraeのクラウドファンディングプロジェクトは、結果としては当初の目標額の3倍を上回る1億円近い金額の出資が集まったということで耳目を集めており、「その他大勢」として埋もれないだけの話題性の創出という点においても成功した…と言えるのだろう。

(以下、長文でDies irae CF化プロジェクトへの愚痴が続きます。閲覧注意)

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『乙女理論とその周辺-Ecole de Paris-』 感想

乙女理論とその周辺-Ecole de Paris-
乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris- - Wikipedia
乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris- -Limited Edition- (Navel) (18禁) [ゲーム] - Getchu.com


『月に寄りそう乙女の作法』が好評を博したことで発売された本作だが、まず、限定版特典の目玉のひとつであった主人公フルボイスパッチについて。この手の主人公フルボイス化はなかなか難しいもので、モノローグが多い主人公はプレイヤーが大なり小なり自分自身を投影した上で理想のボイスを脳内アフレコしているので、ヘタにボイスを入れてもイメージと異なってキャラの魅力を損なってしまう可能性がある。更に女装ゲーの場合はシチュエーションによって繊細な演じ分けが必要とされる難しい役どころなのだが、さすがは閣下月乃和留都さん(以下先生)というべきか、本当に素晴らしい演技で応えてくれた。
“完全に男の大蔵遊星”“女装しているが、男としての意識が前面に出ている大蔵遊星”“女装しているが、驚いて地が出掛かった小倉朝日”“完全に女装を演じきった小倉朝日”といったシチュエーションによって演じ方をきっちり変えているのみならず“完全に別の声色として作り込んだ”のではなく、すべての演技が「ああ、この遊星君が女装して声色を作ればこの朝日ちゃんの声になりそうだな」という地続き感を維持したものになっている。しかも、その細かな演じ分けのトーン・声色のニュアンスの違いで、今はどんなモードなのか(つまり会話の相手にどのような意識で接しているのか)がその演技力でもって理解できてしまうことが凄い。

正直に言えば、最初にフルボイスでの朝日の声を聴いた時、(中の人が誰なのかを既に知っていて、その人のファンであったにも関わらず)違和感の方が強かった。男性が女装しているという先入観からどことなく低音よりのアルト~カウンターテノールな音域の声を想像していたのに、朝日の声はあまりにもど真ん中ストレートな、いかにもメインヒロイン然とした美少女の声だったので。
だが、プレイしていくうちに違和感が消えていったのは、何より朝日としてのその外見が、まさしく男の願望を体現させたかのような黒髪ロングな美少女であったこと。そして作中における朝日の扱いも、まさに「非の打ち所がない完璧な美少女の理想型」に対するものだったからで。なるほどこれは先入観からくる思い込みで自分の認識が間違っていたのだなぁと素直に納得してしまった。

そんな正統派美少女ボイスは、作中ヒロインとの触れあいのシーンで破壊力を発揮する。ボイス無しの時は、どれだけ作中でそれっぽい描写をされても、脳内で「朝日(遊星)は男である」という意識が第一にあったのでそこまでの怪しい雰囲気は感じなかったのだが、フルボイスになることによってその百合っぽい背徳感が一気に倍増。特にルナとの絡み合いのシーンは、ルナの声色が低音よりなので、高音気味な朝日の演技とのコントラストの妙で百合濃度が致死レベルまで増大しておもわず顔面崩壊。そりゃルナも朝日との関係を不健全な関係だと拒絶しようとするし、だからこそ禁忌を踏み越えてでも「健全な関係を求めたいんだ」と一歩踏み出してしまうルナの決意の重さが際立ってくるし、その後の男バレのシーンでのルナの言動にも説得力が更に生まれるようになっているのだろう。


次に、前作月に寄りそう乙女の作法のアフターストーリーについて。これは本編√エンドのその後を描く物語だが、基本的には「見たいものをお見せします」的なものであって、とりたてて内容に意外性がある訳ではない。……というか、出来の良さが本編と同様にルナ様>>>>>ユーシェ>>>瑞穂>湊となってしまっているのはどうなんだ。前作でのルート毎のクオリティのバラツキを反省したりはしないのか。とはいえ、本編で一度物語を閉じたあとのお話なので、全体的にリラックスした雰囲気で物語が進んでいくのはとても心地良く、正しい意味でのファンディスクの在り方になっているとは思う。それはたとえば衣遠兄様との関係性で、アフタールートでの衣遠兄様の遊星への接し方が、「野望は捨てないがひとりの男子として認めた」という絶妙な距離感となっており、「雌犬の子」と蔑んでいた衣遠の態度がここまで変わったことに妙な感慨を覚えることであったりとか。

そして本編の苦闘を経た末の物語なので、遊星の側にも成長が見られることが何より嬉しい。ユーシェアフターで「(自らの野望に遊星が障害になるので排除せざるをえないことを)察しろ。そして(そう生きざるをえない自分を)許せ」という衣遠に対して、衣遠の思惑に乗せられるけど、それを利用して己は幸せになるのだと胸を張って宣言する遊星。ルナ様アフターで、マンチェスターにある母親の墓前で自らの恋人としてルナを紹介して、「産まれて良かったです。ありがとうございます」「ぼくはお母さまの子に産まれて本当に良かったです。ありがとうございます」と語りかける遊星の姿。本編冒頭で見かけた、生きる意味を見失い彷徨っていたあの少年が、意思の力で世界を変えてここまで辿り着いたのだという感慨に胸が苦しくなる。園遊会で、大事な恋人の誇りを護り通そうと毅然として立つ遊星の姿は、ああ、この子はかつて自分で語っていたようなステキな英国紳士になることが出来たんだなと誇らしい気持ちになる。
だからこそ、「女装ゲー」という本作の売りからは多少外れてしまうかもしれないが、もっと、朝日としての可愛さではなく、遊星としての格好良さ…というか清廉とした凜々しさといったものが見たかったなという贅沢な不満がわき起こらなでもない。フルボイスでの先生の毅然とした演技が良かっただけに尚更。


最後に、本編である乙女理論とその周辺。これはつり乙のバッドエンドで一度女装がバレたあとから派生する物語ということもあるけれど、つり乙本編に比べれば、女装することの重要性というのは下がってるなと感じた。そもそも、メインヒロインのりそなは遊星/朝日が男だって知ってるし。では何が主眼になっているかといえば、これはやはり「大蔵家の、家族の物語」となる。

そのキーマンとしては、やはり前作でも無類の存在感を表していた大蔵衣遠。彼のキャラクター性が大きく掘り下げられ、前作以上に物語に大きく食い込むようになったのがポイントであろう。傲岸不遜・傍若無人・唯我独尊といった単語を地で行くような造形なのに、しかし芸術・才能に対しては誰よりも真摯であり、正統に評価をして最大限の敬意を払うというそのギャップが彼の魅力の大きなひとつ。その彼のバックボーンが大きく掘り下げられたことによって、乙女理論のみならずつり乙本編も含めて「家族」や「才能」に対しての彼の態度の意味合いが補強され、再帰的につり乙時点での衣遠の評価も高めるようになっているのが素晴らしい。物語の始まりであるつり乙バッドエンドの裏に隠された意味合いを知った時の衝撃といったらないし、あのエイプリルフール企画ですら、表層だけみればブラコンを拗らせた衣遠の滑稽さを楽しむもののはずなのに、衣遠の真相を知ってしまうとその姿に切なさを感じ取らざるをえない。
その衣遠の親友であるジャンも物語を通してのキーキャラだが、自らの意思で人生を歩き始めて世の中に認められた人間だったからこそ、遊星にああやって対していたのだろうし、そんな彼だからこそ衣遠の側に居続けることが出来たのだなあとしみじみと。アントワープの4人のエピソードなども、ただの青春の1ページとしてだけではない意味合いを持つよね。

そして、主人公である遊星/朝日。パリで数多の悪意に晒されて心が折れかけたあとで、それでももう一度立ち上がろうと兄妹で手を取り合い自らを鼓舞する朝日の姿で分かるとおり、つり乙本編より遊星/朝日が主体となって動くという意思が強くなっている。そもそもの物語の始まりが前作のバッドエンドがあってもなお女装してまで夢を貫こうとする遊星/朝日の姿勢があってこそだという事もあるが、桜屋敷の中で奮闘していたつり乙と違って側に守るべき対象であるりそなの存在があるということもあってか、より主体的に動こうとする意志が随所に感じ取れるようになっており、大変に気分がいい。りそなの王子であろうと胸を張るシーンなどは(シチュエーションの違いもあるが)つり乙では描写が難しかったものだろう。

ただ、そうやって遊星が主人公として覚醒して、キーキャラである衣遠が深く掘り下げられた反面、せっかく攻略キャラとして抜擢されたはずのりそなが割を食ってしまった感じがするのは残念ではある。遊星の場合、最初からりそなに対しては家族的な愛情からくる守るべき存在として接していたので。その家族愛が恋愛感情へとチャネルが切り替わるのが今ひとつしっくりと来ないのが問題というか。遊星/朝日の合わせ鏡な存在としてのりそなの姿の有り様というのはとても好きで、特にOPムービーの「蛹が繭を飛び出て蝶になる」モチーフが共に並び立って羽ばたくシーケンスは、もしかしたらつり乙本編のルナと朝日のモチーフよりも好きかもしれないのだが、これは恋愛をするヒロインじゃなくても成立するんじゃね?と思わされてしまうのがどうにも。

つり乙の魅力だった大人数でのわいわいとした掛け合いが、舞台をパリに移すことで減じてしまうことを恐れていたがそれは杞憂だった。りそな以外の攻略ヒロインであるメリルの天衣無縫さやエッテのまっすぐさは当然として、非攻略キャラであるリンデ&ヴァリーややリリアーヌ&華花も、もうひとつの大蔵家である駿我&アンソニー兄弟もそれぞれに魅力的。キャラ数が多いのにどいつもこいつも生き生きと動いているのは、『俺たちに翼はない』あたりにも通じる部分があると感じた。桜屋敷の面々をどうやって本作に出してくるのかという命題に対しては、そこにルナ様が居るという存在感だけで、物語における効果を最大限に発揮するような配置にしたのは妙手だった。パリ組を殺さずにルナ様の株を下げない上手いやり方だよね。しかし桜の舞う中での会話を見ると、やっぱりルナ様は別格だなあとつくづく。


大人数での掛け合いといえば、西又の絵柄がつり乙の時に比べても更に上昇しているので、鈴平の絵柄と並べた時の違和感がつり乙の時よりも更に減じられていることも評価の対象だろう。メリルの立ち絵なんかは分かり易いが、今までの画風にあった野暮ったさが大幅に薄れており、西又の絵のはずなのに、一瞬鈴平の絵と見分けが付かなくなるもんな。まあ、イベント絵になるとまだちょっと…ではあるけど、今までから考えれば信じられないくらいの進歩だ。絵柄といえば、朝日がそっぽを向いている立ち絵がつり乙本編の時から好きだったんだけど、今ではのヮのにしか見えないのはどうすればいいのか…

乙女理論の不満点としては、これもやはりルート毎のクオリティのバラツキになってくる。というか、パリってる人は場を華やぐ明るい雰囲気に持っていく役割としては文句の付けようがないくらいに素晴らしいけど、なんて自らがヒロインになった瞬間に霊圧が消えてしまうのか。ただ、その分りそなのルートはとてつもなく素晴らしいしメリルルートもかなり良いので、(製作時間を考えた際の)致し方ないトレードオフと割り切らざるをえないのか。エロゲーとしてはルート毎のバラツキが少ない方がいいんだけど、ユーザー体験としては1ルートだけでも素晴らしいものがあった方が印象が強くなるというジレンマ。



全編通して、作中で語られる「意思が希望を生んで、希望が夢を育てて、夢が世界を変える」とてもいい物語だったと思う。前作であるつり乙をプレイした時点で既に乙りろは発表されていたのだが、その時に「続編があるならこういうものが見たいなあ、やってくれたらいいなあ」と希望していたものはほぼ叶えて貰えたといっていい(特に「大蔵家の物語」の掘り下げは希望以上だった)。つり乙のプレイがほぼ前提の構造なのがやや引っ掛かるが、ファンディスク(というか派生作品)としては正しい有り様と言えなくもないし。
というか、(一時期に比べれば話題作への出演も増えてちったぁ改善されたとはいえ)先生の芸達者な(not芸人)面があまり注目されないことには歯痒い気持ちがあるので、もっと評価されるためにもCS移植とか逆移植とかしてその時に乙女理論も主人公フルボイスにしてくれませんかね蜜柑屋さんや。5万までは出すよ。


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『愛姉妹IV 悔しくて気持ち良かったなんて言えない』 感想

愛姉妹Ⅳ 悔しくて気持ち良かったなんて言えない
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愛姉妹IV 悔しくて気持ち良かったなんて言えない -市川小紗集大成! 豪華絢爛原画集パッケージ版(一部総天然色)- (シルキーズ) (18禁) [ゲーム] - Getchu.com


エルフのサブブランドであるシルキーズの人気シリーズであった「愛姉妹」の最新作だが、構成メンバーが一気にシルキーズプラスに移籍してしまうために結果としてブランド最終作となってしまったという経緯を持つ本作品。愛姉妹といえば「美人姉妹を脅迫して凌辱するも、次第に情に流されて和姦のようにノリが混じっていく」というストーリーラインが基本であり、本作もそこから外れることはない。ないのだが、脅迫的な、ドロドロとしたノリはかなり初期の段階でかき消えてしまい、和姦指向の強いエロに早々に移行してしまったことにはちょっとした肩透かし感を覚えてしまった。

まず、攻略ヒロインたちがどいつもこいつもエッジが立ってて普通じゃない。一番特徴的で一番気に入ったのは姉である愛美で、主人公が母親のネタで脅迫しようとしたのにすべてを喋らせずにまず殴ってくるという「言葉より先に手が出る」タイプのキャラ。しかしさばさばとした気っぷの良い性格で、不覚を取って処女を奪われてもめそめそと嘆くこともないし、中盤以降は「脅迫されているという体裁でエッチを続けるのはめんどくさい。アンタとのセックスは気持ちいいからこのままの関係を続けよう」と自らセックスフレンドとなることを提案してきて思わずのけぞったよ。女神か。まあ、「凌辱されているうちに恋心が芽生えてきて…」といったよくある展開を避けた新しいアプローチだなと感心もしましたが。
それに限らず、愛美は健二との距離感の取り方がとても良い。害意を持たないセフレ以上・恋人未満みたいな空気の中で、エロシーンの前後に差し込まれる微妙に気が抜けた遣り取りがいちいちグッと来るんだけど、特に真っ裸で寝床の上でアイスを食べている愛美とのやりとりが非常にたまらない。外見的にもロングヘア・黒髪・巨乳・ツリ目・姉キャラと役満コースだしな!

愛美以外にも、話の全ての発端となった江利子さんと佳祐のギクシャク夫婦も、清美と奈々子の凸凹親友コンビも、普通とはちょっとズレた感性の持ち主たちだけど面白い奴らだ。ポチャ子も、登場した当初は非常にめんどくさい地雷女だなおい!と顔を顰めたものだが、そのうちに、めんどくさいさも含めて可愛いなこの女、仕方ねーなーと健二にシンクロさせられてしまう。
そんな独特(褒め言葉)な登場人物たちに彩られた本作品は、過去作品に比べたらコミカルなCG(目の描き方を崩したりするような漫符表現)も多めで、どことなくバカゲーっぽさ・エロコメっぽさを漂わせたノリで進む。そんな独特の空気感が頂点に達したのは、ハーレムルートでの家族会議のシーンだろうか。普通の寝取りゲー・凌辱ゲーだったら大層な修羅場になっているはずなのに、馬鹿馬鹿しさを残しつつもエロシーンに結びつけつつ大団円ハーレムエンドへの道筋を付けてしまったことには心底感服した。


そして頭のネジがぶっ飛んだヒロインを受け止める主人公である健二のキャラ立てもひと味もふた味も違う。不幸な生い立ちで現在の境遇も恵まれていない所謂「底辺層」として描写されている彼は、己の肉欲と不幸の腹いせにセレブ家庭をまるごと不幸に陥れようと脅迫するような屑であることは確か。だが、おなじシルキーズのブサイク系主人公でも、『学園催眠隷奴』のデブジさんみたいな完全なる悪性なのかというと、そうではない。
脅迫して凌辱している女の子に泣かれたら途端にアタフタと動揺してしまうし、自分の性欲をヒロインに叩き付けようというよりは、「自分も気持ち良くなるために相手も気持ち良くさせてやろう」「女の子が本気で嫌がる行為を無理強いしても、気持ち良くセックスできないからやらない」という予想外の紳士っぷり。つーか、そもそも凌辱キャラのはずなのに一人称が「僕」という時点でお察しなんだけど、どす黒い闇に染まっておらず、愛嬌があって憎めない。

そんな憎めない健二を、なんだかんだでヒロインたちが受け容れてしまう過程が面白い。健二がブサメンのデブというのは作中で何度も強調されていて、それが覆されるということは一度も無い。ブサメンであることを否定されることもない。だが、今作品のヒロインたちは、それらを前提とした上で、主人公を受け容れてしまう。お前ら脅されたり騙されたり凌辱されたり強姦されたりしてただろ、という突っ込みを入れたくはなるものの、この主人公とヒロインの組み合わせじゃあまあ仕方ないかなという感じで得心がいってしまう。
それは学園エロゲの主人公のハーレム展開並みに現実的には有り得ない展開なのだが、学生ものエロゲの主人公は「絶対にこうはなれない過去の理想型」な訳で、「まず実現しないファンタジー」と割り切って受容できる訳ですよ。でも「ブサメンでデブだけど、気弱で女の子の気持ちを踏みにじれない」なんて自己投影できてしまう主人公が女の子と…なんてシチュエーション、現実から地続きな先にある願望じゃないですか。「(ブサイクだけど)アンタとのセックスは気持ち良くて気に入っている。このまま孕まされたい」「(ブサイクだけど)お兄さん以外とセックスしたくない。このまま孕んだら子供を産みたい」と種付けをせがまれるこの感動ったら!!!!!


原画担当はブランドお馴染みの市川小紗さんだけど、これが非常にエロい。今までの市川原画も非常に淫靡だったけど、たとえば女系家族や河原崎家なんかは塗りが綺麗すぎて、興奮に直結して股間にダイレクトに訴えかけるようなエロさではなかったと個人的には感じていた。エロスはゲームのダウナーかつミステリアスな雰囲気とかも込み込みで感じるものかなーと。
しかし今作は塗りの方向性を変えたのか、陰影の付け方が全体的に強めになって体型の見せ方にメリハリが感じられて非常にエロい。いわゆるエルフ塗りの延長線上なのにここまで直截的にエロくなるというのはわりと予想外。そして市川さんの絵柄自体も全体的に肉感的な重量感を強調する方向になっており、特に愛美のスレンダーなのに自己主張が激しいおっぱいの描写が素晴らしすぎてたまりません。


ツボをこれ以上ないくらいに的確に押さえてこられた本作だが、不満点も無くはない。まずはCGの使い回し・シチュエーションの使い回しが多いこと。ただこれは愛姉妹シリーズという大枠の中では「毎日のように女達を呼びつけてエッチをする」っていう筋立てを外すわけにはいかない以上は仕方ないことではある。調教ゲーとかだってイベント調教じゃない日常の調教シーンにすべて新規CG起こすわけにもいかないから、使い回しはどうしても多くなってしまう訳だし。そもそも使い回しの方法が上手というか、マンネリを感じさせにくいようになってはいる。
でもこの作品はエンディングへの条件分岐がちょっと分かりにくいので(朝昼夜のスケジュール管理や複数キャラ同時進行のフラグの維持とか)、同じシチュエーションを何度も見続けることになることにはストレスを覚えるのよな。攻略に頼っても結構な長丁場だったし、それが不満といえば不満。

それから、ヒロインたちと奇妙な心の交流を重ねて仲良くなっていく過程がもうちょっと見たかったという欲も出てしまっているのだが、これは贅沢な願いだろうか。作品の方向性を考えればそれほど膨らませ切らない今の分量バランスが正解なのだろうけど、キャラ立てがとても上手で主人公との間合いの取り方も一種独特、単純なラブラブ和姦と違う感じだけど確かに何かが繋がっているというのは新境地だったと思うので、勿体なく感じてしまう。シルキーズプラスの移行に伴ってその流れが途切れてしまうとすればとても残念だ。シナリオライターは女系家族3の人らしいので、市川さんともども今後の去就が気になりますわ。


Windows以前のかつての最盛期を知っているユーザーとしては、シルキーズのブランドとしてはやっぱり河原崎家の一族・野々村病院の人々、あとは恋姫ビヨンドといったあたりでブイブイ言わせていた頃の印象が未だに強い。2000年代の再始動後は業界内部のポジションは相対的に減退してはいたものの、アンジェリカのような特徴的なタイトルや女系家族シリーズなどもリリースしていたので、ブランドとしてこれで終わってしまうのは非常に残念ではある。だが、その最後の最後でこのようなとても素晴らしいタイトルを遺してくれたことには心からの感謝の気持ちしかない。ありがとうありがとう。

『相州戦神館學園 八命陣』 PV1公開

相州戦神館學園 八命陣

そもそも、ここのところは期待感よりも不信感の方が先に立っていた訳ですよ。その大きな理由はやはり、先日の更新で発売日が12月20日と発表されたこと。直截的な物言いをするならば、正田崇は「ファーストリリースの未完成品っぷり」と「その後の派生展開やらでの後付け設定バラマキまくり」という悪癖を持っているというのが周知の事実となっているけれど、果たして今回の戦神館は最後まで書き切れるのか。情報が公開されたのがついこの間の6月だというのに、そこからたった半年で完成まで漕ぎ着けることが果たして可能なのだろうかということに疑念と不信を抱いていた訳です。
正田崇がシナリオを書く作品については、事前に提供される体験版やデモの出来は、最終的な製品版の内容を推量する材料にはなりえない……むしろそれで過剰に期待していると手酷く裏切られるというのは過去2回のやらかしで証明されている。「ディエスや神咒のCS版を開発している頃からネタを仕込んでたはずだし、さすがに今回は間に合うんじゃねーの?」なんて推測はダダ甘だ。ディエスは企画だけなら2004年あたり?から動いていたはずなのに発表初出は2006年になってからで最初の体験版が出たのは更に遅れて2007年の1月。しかもそこから延々と1年間も延期し続けてようやく2007年の12月に発売まで漕ぎ着けたものの、その結果があの怒りの日の惨劇だったってことを忘れてはいませんかお前ら。神咒にしたところで、構想・企画自体はクンフト/ファーブラの開発時期からあったはずで助走期間は十分に取っていたはずなのに蓋を開けてみたらあの体たらくだ。
それから、発売予定日が12月に設定されたというその事実そのものに対して猛烈に不安感がある。年末時期に出すことが悪いとは言わないんだが、07年版ディエスの発売日(=怒りの日)が2007年12月でディエス作中の時間軸も12月。ちなみに07年版の禊ぎをすませたファーブラの発売日もやはり、09年の12月。そんな奇妙な符号があったせいで、07年版の直撃を受けた人間としては、(ただの偶然か狙ってやっているのかは不明だとしても)今回の戦神館の発売日が12月というところに不吉な匂いを感じ取らざるをえない。……というか6年も経過してまだダメージ受けるとは思わなかったよ。俺含めて07年版クラスタのダメージ受けっぷりは笑えんわ。

それでも、過去の罪業を反省して粛々と執筆活動に勤しんでいるのならば、今回こそはと心を落ち着けて待っていられたかもしれない。だが、ファンサービスという言葉を勘違いしているのか最近注目度が上がってきたからって調子ぶっこいてるのかはしらんけど、Twitterで出来の悪い釣り糸を垂らして悦に入っているようでは先が思いやられる。神咒ならばまだ過去作との兼ね合いもあるからという言い訳も立つけれど、完全新作の戦神館でやられたら興醒めだわ。これからの執筆で設定が変わるかもしれないならば混乱するだけだから表に出すなといいたいし、そもそも発売まで半年を切った今のタイミングでまだそんな薄ぼんやりとした状況なのかよと助走を付けて殴りに行きたくなる。lightはマスターアップするまで正田からツイッターのアカウント剥奪して拉致監禁して表舞台から姿を隠させておけと言いたい。精神衛生上よろしくないわ。(ミュートしておけばいいって?いやそういうことじゃなくてな)

あと、これは正田の意向というよりはlightの会社としての方針なんだろうが、またショップ別ドラマCDとかえげつない商法で売りつける気まんまんな雰囲気であることに加えて、エレクトロアームズと抱き合わせでの予約キャンペーンという露骨な展開にも辟易させられる。「社内ライターである高濱亮の名前を売りたいのかもしれないけど、昏式さんとは方向性のベクトルぜんぜん違うからライン分けたほうが統一感出ていいんじゃねえのか」というのが本音。Zero Infinityはまだ積んだままだから分からんけど、Vermilionの時はそのちぐはぐさにケツがむずむずしてましたよこっちは。まあ、アイザックの狂信めいた執着はトシローとの対比も含めてプラス方向の劇的な化学変化でとても良かったので、そこは評価してるよ。面白かったしね。でも、根っこのところのベクトルが違うっぽい印象あるし、そろそろピン立ちさせて、成功も失敗もひとりの肩にひっ被せる形にしないと一皮剥けないんじゃないかねえ。

ちょっと話が逸れた。ということで、せっかくの完全新作ではあるけれど、刺々しくヘイトの空気をまき散らしながら最近の展開を眺めておりました。正田は釣り師としての腕だけは段階を踏む毎に着実にレベルアップしてるからPVや体験版でも露骨に引っかけてくるんだろうが、こちとらそうそう何度も釣られてたまるものかよ、そもそも完全新作だからディエス神咒みたいな思い入れ補正入らないしな!と心理的な閾値を上げて事に備えていた訳です。……ところが。


くっ、いい加減に仕事しなさいよ、この最低ライター……
こ、こんな露骨な釣り糸で私たちユーザーを好きにできると思ったら……



うは、ぬはぁ!ぎ、ぎもぢいひぃ!
むぉおおお~ん! 特典複数買い確実ぅ! (アヘ顔ダブルピース)

やっぱり閣下のロンギヌスには勝てなかったよ……


さんざ悪態ついといて一発でマッハ堕ちかよ!くやしい…!でも…感じちゃう!状態じゃねえかよどんだけ調教されてるんだよ我ながらどこのサトウユキ(敬称略)だよ!!!!! ……という訳で、物語の世界観を浮き上がらせるようなイメージムービー的だったり、還るべき学園生活を象徴するようなキャラクター紹介みたいな情報公開初期のリソースとして順当なものではなく、いきなりぶつけられたのが神咒のPV3とかファーブラPV4みたいに最初から物語のクライマックスに食い込むかのような内容だったことに不意を突かれて、まんまと釣られてしまったというあまりといえばあまりなオチでした。ふーん、今回は学園ものなのか。はいはい狼少年乙。


ムービー本編は水希の回想めいた独白から始まるのだけれど、その語りで指し示している男というのは、果たして過去の神野なのか、水希が過去に夢界の深層に潜った際の元カレ的なアレだったのか、それとも本編開始後の時間軸での四四八なのかが判然としない。そもそも神野が水希と因縁があるのかすら不明で、神野の特殊技能か何かで、過去の水希と誰かのやりとりをなぞっているだけという可能性もあるしな。情報があまりに断片的すぎて、現時点では水希と神野の間には浅からぬ因縁が存在しそうだなあという事くらいしか分からない。
水希が横たわっている燃えさかる戦艦だが、舞台である鎌倉だったら近くに横須賀港があるし、敵方のキーラちゃんがロシア軍人となれば連想するのは日露戦争だしということで、日本海海戦の旗艦の三笠を改造して拠点にするとかかなーとか安直に想像した。皇国の興廃~とZ旗を掲げて最終決戦に挑む→あえなく敗退というのはわりと分かり易い負けフラグの構築方法だし。架空戦記だったら大和の方が厨二病的には美味しいけど、わざわざ公式の説明で「時間軸が明治から大正にかけて固定されている」とか書いているのに昭和まで時代を下るのか?という疑問が出てくるし。(明治期から数えて100年のレンジだから太平洋戦争時代も射程圏内だけどね)
映像では、戦艦の艦橋が宗教建築を思わせるような外観に改造されているように見えた。となるとべんぼうとの協力関係も考慮して逆十字が絡んでいる可能性は高そうなので、3分24秒あたりで姿が見える男が逆十字サイドの首領格じゃないかなーと推測される。神野の途中の詠唱(?)は正田曰く「きりやれんず きりすてれんず きりやれんず」ということで、これはキリエ・エレイソンの聖句。で、キリエ・エレイソンの聖句は東方正教会の典礼でも頻繁に用いられているから、ロシア繋がりでキーラちゃんもとい鋼牙の可能性もあるかもだけど。

と、言うか。水希の一人称だからということもあるだろうけれど、予想していたよりもヒロインをやっているなあというのが率直な感想。「秘密を隠した、先導者としての立場を持つ先輩」という情報からもっとミステリアスな雰囲気を纏っているものと勝手に想像していたんだけど、今回の独白からは苦悩に引き裂かれるひとりの女の子の姿も、神野に対しての雄叫びからは戦うバトルヒロインとしての姿も見ることが出来て、これはど真ん中メインヒロインの風格あるわーと感心した次第。水崎来夢さんの声もストレートな透明感があっていい感じだしね。
そして四四八がマジでイケメン&イケボ&リーダー気質すぎて濡れる。メガネ主人公なのに、なんでこんなにカッコいいのよ、よしやん。そして声もカッコいい。矛盾を抱え込んでそれでも前に進む様を表現しきった先割れスプーン大先生や、豪放磊落で闊達なヒーローを張り通した堀川忍さんとはまた違う方向性で、これはこれで大変素晴らしい。シーザー!! ……でもイケメン&冷静沈着すぎてチンコおっ勃ててる姿があんまり想像できないのはエロゲとしてはどうなんだろうか。

与猶啓至のサウンドは相変わらず最高で何よりだ。2分22秒からの、ぶっちぎりでテンションをクライマックスまで持っていくヨナオ節全開のスラッシュなBGMも然り、ディエスのαやΩを連想させるような壮麗な公式サイトのバックで流れているBGMも然り。このチームの高い評価のかなりの部分は、パラロス以来ずっとハイアベレージを叩き出している与猶神のサウンドの安定感が稼いでいるというのは衆目一致するところだろうが、今回は過去のディエス(バロック)や神咒(和風)みたいなモチーフとなるテーマが無さそうなところで、どういう方法論でもって作品全体を貫くような統一感を出していくのかという点にとても期待している。


覿面に釣られて大騒ぎしている人間が言うなという話ではあるが、今回のPV1に対して、ひとつ強い不満があるので声を大にして言っておきたい。今回の戦神館は過去作と一切の関係がない完全新作であるということを殊更に強調しているというのに、情報公開の最初期の、予約開始された段階で提供されるムービーがあまりに新規ユーザーに対して優しくない内容だったのは販売戦略としては失策なのではないかと思うがどうか。
初見のユーザーにインパクトを与えて購買意欲に結びつけるという考え自体は理解できるが、それは事前知識がなくても映像を見るだけでもサプライズを感じ取れるのであればこそだろう。だが、今回のPV1の内容は、既にサイトや雑誌記事などで提示されているような情報はすべて把握している我々のような“馴染みのお客さん”を想定して、それを前提条件とした上でミスリードさせるような新しい情報を断片的に与えて眩惑させるという意図が見える。これでは、興味を持って公式を覗きにきた新規ユーザーは、いったい何のことを描いているのか分からず呆然となり、一見さんお断りの信者専用ゲーの雰囲気を感じ取って敬遠してしまうのではないだろうか。というか、他のタイトルで同じことやられたら、俺だったら回避してエロ助や2chの評判待ちに回すわ。信者評価なんざ当てにならないからな。
これに限らないが、作品自体が向かう方向性が、既存のディエス・神咒の時の手法を「分かっている」人間にのみ向けたものになってしまうようでは、たとえ世界観を異にする完全新作だとしても、限られた信者を相手取った内輪向けのオナニーの誹りは免れないだろう。既にそのような雰囲気を随所に感じ取っており不安感は募るばかりだが、今後の展開で、そんな斜に構えた自分のようなひねくれ者の危惧を払拭してるくれることを願ってやまない。


(以下、PV1からの抜き書き。ボイスはヒアリングにつき誤読の可能性あり)

「私……負けたんだ……」

炎上する鋼鉄の暴力装置。
彼女らが最後の戦場として臨んだ戦艦は、今や巨大な棺桶と化していた。

燃えているのは艦だけではない。
彼方に見える陸地もまた、紅蓮の業火に包まれている。

海は愉悦にせせら笑う魔王の貌<かお>であるかのごとく、さらなる絶望を与えてやろうと不気味にうねり、鳴動している。

「きりやれんず きりすてれんず きりやれんず ぐろおりあす」

何一つ、何一つとしてここに希望的なものはない。

混沌<べんぼう>があふれる天の下、勝利の凱歌を謳うがごとく、
楽園の夢を求めた男が播磨外道(はるまげどん)を吟じている。

予想通り、順当に、何のひねりもない結末のみを晒しながら、
ここに地獄の釜が開いている。

今度こそただ一人となった水希は宙を見上げ、
もはや祈るべき如何なることも許されないのだと悟っていた。

「さあ、待たせたね。これからだよ」

なぜなら、この悪魔がこれで終わらせるはずなどないのだから。
未来永劫、永遠に。終わらない。終わらない。終わらない悪夢の始まり。

「今の僕は強いだろう? 愛してくれよ」
「神野ぉぉぉぉぉぉ!!!」

噴きあがる嚇怒<かくど>の念は、いったい誰に対してか。
それすらもはや分からない。
ただ思うことは一つだけ。
彼女の胸にある真実はいつだってその一つだけ。

強い男の人が好きだなんて、
何があっても言ってはいけなかったのだ。

でも……ああ、なぜだろう。

すべてを失い、踏みにじられて、
ただ一人残った自分が百年の眠りから覚めた今……
自分の剣を防ぎ続けるこの武技が、
なぜかどうしようもなく懐かしいのだ(・・・・・・)。

知らず涙が溢れ出そうになってくるほど、
胸の大事な部分を疼かせるのだ。


これは何? 何の呪い?
どうしてそんな、有り得ない夢……

「柊……くん……!?」
「嘘……夢だよ…こんなこと…」
「また……逢えた……」

そう、それは百年に渡る夢と現実の物語。


「ねえ……私、邪魔、かな」
「私に逢わない方が良かったって、思ってる?」

「いいや、それだけはない」
「何があっても、お前が悔やむことなんかないんだ世良」
「誰もそんなこと言ったりしない」

いつか何処かで、前にもこんなことがあったかもしれない。
そんな風に今思うのは、気のせいだろうか。

「なあ、戦うぞ。戦って夢から覚めよう」
「これは俺たち全員が望んだことだ。巻き込んだんでも、巻き込まれたんでもない!」

強いってどういうこと? なぜ強さを求めるの?
その答えをこれから俺たちで形にするんだ。

二度と間違えないように。
誰もこの瞬間を後悔したりしないように。

「またこの朝に帰る!」

ただそれこそが、皆で奉じた
戦<イクサ>の真<マコト>と千<アマタ>の信<イノリ>に他ならないから。

「行くぞ!!」

『月に寄りそう乙女の作法』 感想

月に寄りそう乙女の作法
月に寄りそう乙女の作法 - Wikipedia
月に寄りそう乙女の作法とは (ツキニヨリソウオトメノサホウとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
月に寄りそう乙女の作法 -Limited Edition- (Navel) (18禁) [ゲーム] - Getchu.com


Navelのブランド設立10周年記念作品ということで、とても久しぶりになる鈴平ひろ・西又葵のダブル原画なのだけれど、これが今までの印象からガラッと変わっていて。中間色のグラデーションを多用したイマっぽい感じの塗りなんだけど、作品のノーブルな雰囲気にマッチしているし、なにより美麗で目を惹く。CGを見ているだけで綺麗だなーと感心するのは久し振りだ。ルナ様のその全身から醸し出されるオーラは、あの銀髪赤髪の塗りの綺麗さに因るものが少なくないのではなかろうか。鈴平の原画も以前より華やかになっているなあと感じたけど、久し振りに競うことになった相方に引っ張られたのか塗りに引っ張られたのか、野暮ったさに定評のある西又の絵柄までもが洗練されて美麗に見えてきてしまう不思議。いやほんとにね。でも西又絵が悪いという訳でもなく、鈴平絵だけだと線が細くなりすぎそうなところを防いで厚み(デブ的な意味じゃなく)を持たせるいいバランスになっていると感じた。

音楽も全体的に自己主張が強い感じで耳を奪われるので、おおさすがにNavelは音楽強いなあと思っていたら、クレジットでアッチョリケではなくて外注のArte Refactが書いていたことを知ってとても驚いた。だけどその絢爛な作風は、高いクオリティもさることながら、芸術というお題目をあげた今回の作品の雰囲気に寄り添った作りになっていて好感が持てた。思わずサントラ買ってしまったよちくしょう本当にいい出来だなおい。
ボーカル曲はさすがのNavelクオリティで、特にオープニングが良かった。落ち着いたミディアムテンポの楽曲なんだけど、Bメロまではギターとベース・ドラムのシンプルな構成で引っ張っておいてからサビで入るストリングスで一気に盛り上げるという構成が、OPムービーで鳥が羽ばたくシーンと重なることでの開放感に繋がっていて素晴らしく泣ける。(後述するけど)物語の内容にも合っているしね。あとエンディングは明るすぎてちょっと違うんじゃないかな?と思ったりもしたけれど、すべてプレイし終わった後に聞くと頬がにやけてしまうんだからこれで正解なんだろうな。


これはNavelの特徴と言っていいと思うんだけど、全体的にキャラが立っていて、飽きさせない。特にサブ周りにピーキーなキャラを配置して賑やかすというのはSHUFFLE!というよりは俺つばで目立ってたけど、今回もそんな軽妙なやりとりは変わらず。この辺りは、先述した鈴平・西又(あとサブ原画の羽純りお)の複数原画による多様性の厚みが功を奏していたと思う。鈴平キャラだけだと線が細くてコメディを回すのはちょっとキツいかなと思う箇所がままあったし。そんなサブキャラも日常シーンの賑やかし要員としてだけではなくちゃんと物語本筋で教え導く役割を果たしているのは上手だなーと。個人的に気に入ったのはサーシャさんかな。二の線もコメディも張れるいろいろと美味しいポジションよね。

メインヒロインの中でも、ルナ様のキャラ造形は近年希にみるヒットと言えるだろう。誇り高い立ち居振る舞い、思わず自然に傅いてしまうような気品・言動というのはなかなか表現しにくいはずなのに、プレイしていると、朝日がわずか2ヶ月くらいで従者としての心根になりきってしまった理由が、八千代やメイドたちが尊敬の念を持って接する理由が、散々な目に遭わされながらもユーシェが付き合い続ける理由が、ちゃんと分かる。朝日ならずとも「ありがとうございます。お優しいルナ様」と跪きたくなってしまう。ルナ様の場合は銀髪赤目というキャラデザインの時点で大勝利という気持ちもなくはないが、そのデザインに負けないだけの内実を入れ込んだライター勢はほんと偉い。卯衣さんの演技は棒読みに定評があるんだけど、今回はとても良いンダナ。いやダウナー系って演技の違いを付けるの難しいはずなんだけどきっちり演じ分けてるし本当に良かったですよ。朝日に対しての感情を持て余して戸惑っているあたりの演技は出色。エロシーンでの言葉責めも最高でした。


しかし何より、主人公である大蔵遊星/小倉朝日のキャラ造形が素晴らしいんだ。女装ものの定番として、主人公が一番可愛くて「こんなに可愛い子が女の子のはずがない」を地で行くような、もう男でもいいやというレベルの可愛さ。でもそれだけではなくて、何より強い意志の強さ……というよりも欲求がある。女装して学園に潜入するという事実を許容しているわけではないけれど、そんな無理筋を通してでも、胸に芽生えてしまった「人生を笑って過ごしたい」という希望、「憧れたジャンと同じ服飾の世界に進みたい」という夢に殉じたいと強く願う遊星。こと女装潜入というシチュエーションは、そのキッカケが受動的な(主人公にとっては本意ではない)外的要因によるものが殆どなんだけど、本作は主人公である遊星/朝日の内からわき上がる欲求によるものだということが物語のポイント。
そうなるに至った切欠というか、大蔵遊星という人格がどのようにして成り立っていったかという説明をプロローグの走馬燈の辺りで一気に見せてしまうというのはなかなかのバクチな手法だけれど、今回についてはアリかなと。走馬燈で描かれた、純粋過ぎてどこか虚ろな現実味に欠ける遊星少年がその内面に潜んでいるというバックボーンを理解しているからこそ、本編での朝日の天使のような無私の立ち振る舞いに作り物っぽさを感じにくいというか、ああこの子は本心からそう思ってるんだろうなあと納得できるし、ある種の痛ましさを覚えるようになっている。

つまるところ、本作品はなにより遊星/朝日の物語なのだろう。純粋ではあるもののどこか歪な空虚さを抱えた遊星/朝日が、世界を見て、人を知り、己の進むべき道を見出すことによってそのうつろな洞を愛で埋めていく。出来が良かったルナ様・ユーシェのルートで顕著だけれど、彼ら彼女らに襲いかかる困難を打破するためには朝日の努力によってブレイクスルーを起こすことが必要になるのだけれど、そこには物語の要請で無理矢理捩じ込んだような印象はなく、とにかく頑張ってくれ、是非とも朝日を救ってあげてくれという見守るような気持ちが強くなってしまうのだ。
だからこそ、俺が一番グッと来たシーンは、ルナ様ルートでの衣遠兄様と和解するシーンだったりするわけですよ。捨てられ戸惑う子供のような怯えた眼差しをしながらそれでも何かを期待するかのような遊星の姿と、そこでなにかを振り切って年長者としての姿勢をはじめて見せる衣遠兄様の姿というのは、プロローグの走馬燈から地続きとしての大蔵遊星の物語を締めるものとしてはピッタリだった。りそなは割を食った感じがあるし衣遠兄様も含めて大蔵一族の物語をもっと見たいなあと思うので、続編の乙女理論ではその辺を深掘りしてくれることに強く期待したい。


まあ、ちょろっと難点といえば、場面転換のアイキャッチで出てくる「ドーン!」っていう効果音がデカすぎることかな。雰囲気重視のタイトルなんだから、そこはもうちょっと考えて欲しかったというか。俺つばみたいにコメディ主体の作品ならばそれほどには気にならなかったと思うが。でも、その演出があるから後をひかないというか、ザクザクとぶった切るテンポの良さにも繋がっているように見えるから悩ましいところではある。
それから、まあ、ルート毎の出来の格差かな。つーか、露骨に鈴平担当と西又担当でガクンとレベル変わりませんかおい。瑞穂ルートは悪くないんだけど、ルナ/ユーシェに比べると正直落ちる。湊もキャラとしてはとても可愛いし好感が持てるし不憫可愛いんだけど、自ルートの内容は、おいそれ服飾関係ないじゃねえかよなんで新婚さんみたいに同棲してるんだよというツッコミが先に立ってしまってそのなんというか。服飾の素人だからこそというアプローチだったり、昔からゆうちょを知ってるからこそというアプローチでも良かったんじゃないのかなーって。


魅力的なキャラが織りなすコメディ部分とシリアス部分のバランス取りが絶妙で物語としても(ルート毎のバラツキはあるとはいえ)おおむね上質。CG音楽を含めたパッケージの完成度も高く、ブランド設立10周年記念という名前に負けない、相応しいものに仕上がっていたと思う。
だが、そういう客観評価を飛び越えたところで、俺の心のひだの柔らかいところを突かれてしまった。傷付いて独りで震えていたふたつの彷徨える魂が、その欠けた魂の片割れを見い出して、比翼の鳥のように大空に羽ばたいていく。そんな心象の有り様が、変わりゆく光景がとても魅力的で、とても素敵だった。今回の路線は絶対に支持したいので、今度出る続編の『乙女理論とその周辺』には全力出しますわ。

大槻涼樹最新作 『赤さんと吸血鬼。』 情報公開

赤さんと吸血鬼。|ALcot ハニカム



かつてのアボガドパワーズ『黒の断章』以来ずっと活動を追い掛け続けている大槻涼樹所長の最新作が情報公開。前作である2年前の『デッドエンド Orchestral Manoeuvres in the Dead End』と同様に次もコンシューマでの発表になるんだろうなあとある種の諦観混じりで待っていたのだけれど、『蠅声の王 シナリオⅡ』から4年ぶりとなる18禁エロゲーのフィールドへの復帰、しかも舞台はまさかのALcot ハニカムブランド、そして安定の宮蔵プロデュースというこの事実に震えが隠せません。

この一見では異色にも思える組み合わせに至ったのは大槻所長いわく合縁奇縁というけれど、実は個人的には、実現したらかなり面白くなるんじゃないかと期待していた組み合わせだったりするのですよ。以前に『春季限定ポコ・ア・ポコ!』の感想を書いた時に、次のハニカムラインの新作として「メッセージ性の強いシナリオライターが描くコンパクトに纏まったストーリーもの」を期待していると書いたんだけど、実はこのときに脳裏に浮かんでいたのはまさに大槻涼樹シナリオ+宮蔵プロデュースという今回の組み合わせ。でも、まったく根拠がない願望あるいは妄想という訳でもなくて、実現する可能性はあるはずだと思ってました。……あ、後付けじゃないよ!?ホントだよ!?(まあ、ぶっちゃけ以前の記事でボカさずに書いておけば満面のドヤ顔出来たのになあとは思ってるけど)

というのも、今回彩色チーフで参加しているくない瓜さんは元あぼぱMENで元ロスクリスタッフ、更にはセカンドノベルをはじめとしてテクスト。ブランドの作品にもCG彩色として参加している、今もって大槻所長と縁が深い人でございます。で、その彼女、実はALcotの宮蔵さんの実の妹だったりするんですな。血縁での繋がりだけではなくて宮蔵氏の同人ゲームやハニカム文庫/新書にCG彩色で参加するなど、仕事の上でも関わり合いがあるようなので、その時点で可能性の糸は繋がっているだろうと。ついでに言えば、くない瓜さんはかつてフライングシャインで原画をやっていてて現在の仕事においてもその界隈との関係が見えるので(たとえば『ポケットに恋をつめて』のたにみちNONは元フラシャ組)大槻所長と仲の良い元フラシャの荒川工経由での繋がりもあるんじゃないかなーとか。

それから、ハニカム文庫って、まず企画の強さ・面白さありきというイメージがあって。力量のあるシナリオライターの、尖ってて面白いけどボリューム感は出せなさそうな企画を、狙いを絞ってコンパクトに纏めてパッケージングするという方向性。で、大槻所長って、まさにその、エッジの立った企画(というよりネタ)をバンバン生み出す人な訳で。かつてのPCエンジェルで連載していた「北の国から」はその最たるもので、そもそも氏の代表作のひとつである『終末の過ごし方』のネタだってそのコラムで掲載されていたもの。『長靴をはいたデコ』なんてまさに企画そのものがネタだったし(誉めてます)わりと最近でも「TOKYO 非実在性少年」なんてネタ書いてたし。
そういう意味では、企画の面白さが重要っぽい(決めつけ)ハニカム文庫ラインは、大槻所長の強みが生かせるフィールドなのではないかと。企画は尖っていて面白そうでもそれを膨らませられるかは筆力次第だけど、所長って実はわりと苦手分野がなくなんでも書けちゃう人だし、その点において心配することはないだろうから。(捻り無しの王道ジュヴナイルな『テスタメントスフィア』なんかもサラッと書いてたしね。復活希望)

あと、大槻涼樹のファンとして死ぬまで追い掛け続けるつもりの自分としても、ちょっと不満点はあった訳ですよ。ひとつは「デジタライズド・ゲームブックに固執しすぎじゃね?」ということ。いや、あのシステムはとても楽しいしゲームブック/TRPG直撃世代だから思い入れも強いよ。でも、ゲームブックの双方向性を活用できず、そのシステム的な煩雑さが足を引っ張る場合は、作品にとっては逆効果なんじゃないかと。具体的には『長靴をはいたデコ』。あの箱庭的な物語世界を表現するのにゲームブック形式というのはピッタリだったように思うけれど、メタ構造を描いた物語としての表現を重視するなら、通常のADV形式にしてもっとボリュームを膨らませたほうがもっとプレイヤーを没入させられたのではなかろうかという相反する気持ちが発売当時からずっとあった。
それから『デッドエンド』を発表した時は、『蠅声の王』大好きだったからとても嬉しかった反面、またこの形式を引っ張るのかという気持ちがわき起こったことも否定できない。探索シーンとかや雑魚戦闘はそのインタラクティブ性がとても楽しいんだけど、物語のクライマックスにおいてはパラグラフを繰っていく作業によるブツ切り感が情動の盛り上げに水を差して「ゲームブック形式でプレイする楽しさ。サイコロを振る快感」と「物語の盛り上がりを阻害された不完全燃焼感」の両方があったのもまた事実。なんでも書けるはずの人なんだから、ひとつの形式に拘らずに、もっとバリエーションに富んだ物語を見せて欲しいんだけどなあというモヤモヤした気持ちがずっとありました。

もうひとつは、これは本当は不満点とは言いたくないんだけど、「自分企画だとボーク寸前のスレスレを狙いすぎです。もっとこう、手心というか…」ということ。いやまあ今作がスレスレでないとは言わないし(苦笑)そのスレスレのラインを狙っていくアティテュードに惚れたからこそ信者を続けているのだけれど、信者だからこそもっと評価されて欲しい。ロスクリも活動を止めてしまって久しい今となっては、『終末の過ごし方』あたりから知ってるようなオッサンユーザー以外には評価されてなさそうな空気があるけど、もっと若いユーザーを魅了して欲しい訳ですよ。あぼぱ後期からずっと企画・ディレクションも含めて統括している感じがあったけど、実力がある人に企画全体の舵取りは任せてシナリオライティングに専念すれば、今まで見られなかった新しい一面が見られるんじゃないかいう希望があって。そして、ライターが変わっても一定の成功を収めているハニカム文庫は、まさに舵取りである宮蔵氏のプロデュースの巧みさが際立つラインなので、その両者が交わればとても魅力的なものが生み出されるのではないかと妄想していた訳です。


そんな脳内妄想がまさかの現実化という事実に、未だに冷静にはなりきれません。敢えて言えばミドルプライスの文庫ではなくフルプライスの新書ラインというところに、纏めきれるかという不安感が残るわけですがそれはそれ。大槻所長にとってもALcotにとっても新境地となるであろう本作、2013年下半期の今人的な本命のひとつに躍り出ました。全身全霊全力で期待しております。……発売までにハニカム新書の『あえて無視するキミとの未来』を開けよう。うん。

『相州戦神館學園 八命陣』 サイトオープン

相州戦神館學園 八命陣

テックジャイアンでの情報公開から遅れること1週間、正田崇×Gユウスケ×与猶啓至という『PARADISE LOST』『Dies irae』『神咒神威神楽』を手掛けたチームの新作の公式サイトがついにオープン。仕事終わりが遅かったのでちったぁ快適になってるかと甘い期待をしていたけれどそこは悪い意味での期待は絶対に裏切らないlight、相変わらず公式サイトはクッソ重かったです。さすがに学習してるかと思っていたのにまるで成長していない…… 一応サーバ増強したっぽいけど高負荷時にちゃんと捌ききれなければ意味がないです、はい。


さて、テックジャイアンの方でも情報公開されていたが、物語は、主人公である柊 四四八が長年見続けていた明晰夢の世界に、世良 水希との出逢いを契機に友人たちも巻き込まれてしまうという異世界もの。その異世界――“夢界(カナン)”はただの幻の世界ではなく「夢界の深層に一度踏み入れたら後戻り出来ない(ただし、夢から目覚めれば現実世界には戻ってこれる)」「夢の中で死んでしまうと、現実にも死んでしまう」「夢で起こった現象が、因果を遡って現実世界での歴史に影響を及ぼす」という甚だ危険な代物。“異世界漂流+デスゲーム”という構造は、大ヒットとなったソードアート・オンラインをはじめとして最近ひとつのトレンドになっているけれど、完全に異世界から戻ってこれない不可逆なものではなく夢から覚めれば現実世界に帰還できることと、異世界の事象がリニアに現実の歴史に影響を及ぼしていくということは目を惹く箇所かもしれない。
夢界の深層は世界観がなぜか明治~大正期の日本に固定されており、そこで主人公たちは、自らが現実世界で通っていた学校「千信館學園」の前身である「戦真館」の一員として、夢界六勢力(神祇省、裏勾陳、鋼牙、逆十字、貴族院辰宮、べんぼう)が鎬を削る抗争に否応がなく参戦せざるをえなくなる……というのが物語の大まかなアウトライン。敵味方が綺麗に分かれた対立構造ではなく、複数陣営が入り交じるバトルロワイヤルであるというところは過去作品から大きく違うところだろう。

オカルトと近代科学が入り交じった世界観や、明治大正期から日本の歴史を辿っていくところは正田崇が例に挙げていた「帝都物語」(荒俣宏)がリファレンスだということを隠してねえな(苦笑) いやあ今となっては手垢に塗れた世界観ではあるけど、こうやってツボを付いた設定と映えるビジュアルが用意されてみるとたまらんな!厨二マインドが疼くったらありゃしない。いいぞもっとやれ。
それからメインキャラのネーミングや配置は「南総里見八犬伝」以外にも「ヨシュア記」も下敷きにしてますな。そもそもカナン=約束の地とか、メインキャラの名前以外にも、夢界の各層名称がそのまんまだし。ちなみに第八層の「イェホーシュア」はヨシュア(=四四八)のヘブライ読み。近代日本という要素と親和性の高い陰陽道/神道あたりが絡んでくるのは予想してたけど、その予想を超えてかなり盛りだくさんに詰め込んで来ているなあ。こりゃ六勢力ごとにぜんぜん別要素を入れ込んできてもおかしくないわ。並大抵のライターだったらとっ散らかったものになってしまうことを心配するところだが、正田崇にその心配は必要ないだろう。そこは信頼してる。


テックジャイアンの記事を読むと「過去作品のようなパワーゲームではなく頭脳バトルが主体」「敵方との間に絶望的な戦力差は(過去作品ほどは)ない」「(敵方の)能力や使い方に意地の悪い奴が多い」「トラウマを力の糧にするノリを辞める」とかコメントしてあって、Twitterの発言とあわせて露骨に過去作品(というかディエスと神咒)を意識しまくっていることに苦笑してしまう。まあ、まったく同じノリで延々と続けられても胸焼けがして困るので新機軸を求めること自体は歓迎したい。
また、今回ことさらに強調している学園ものとしての要素、味方勢の仲の良さというトピック。それがどこまで成功しているのかというのは今作を評価する上でのひとつの基準点になるだろうな。そもそも、夢が覚めたら夢界から現実世界に戻れるという設定自体が、“本格的に戦いが始まってしまうと最後までノンストップで、ヒロインとの親密度を高めるようなイベントを入れ込めない”という既存作品(どう考えてもディエスだな)の弱点を反省したがゆえらしいし。でもなー、あまりに事前情報で仲の良さとかを強調されると、本編でサックリと裏切られるんじゃないかと警戒しちゃうんだよなー。これはもう過去の正田の所業が悪いとしか言いようがないんだが(苦笑)


そんで今回、一番驚いたのがキャスティング。
Twitter / mayuki_tw: とりあえず「相州戦神館学園八命陣」のキャスト情報を投下をばー ...

とりあえず「相州戦神館学園八命陣」のキャスト情報を投下をばー。柊四四八:土門 熱 世良水希:水崎来夢 真奈瀬晶:磯貝まこと 龍辺歩美:結城 友紀 我堂鈴子:北見 六花 大杉栄光:マーガリン天狗 鳴滝淳士:秋山 樹 (敬称略)ですー。メイン7人はこちらの方々ですー。


Twitter / mayuki_tw: 戦神館キャスト続きですー。柊英里子:松田 理沙 真奈瀬剛蔵: ...

戦神館キャスト続きですー。柊英里子:松田 理沙 真奈瀬剛蔵:小山 剛志 芦角花恵:奏雨 神野明影:一条 和矢 壇狩摩:壱封 堂 キーラ:???? (敬称略)ですー。キーラは近日?公開予定ですー。よろしくお願い致しますー。


既存作品との関わりを邪推されることを防ぐために、役が被らない新規の人をメインでキャスティングするのではないかというのは想像してたけど、ここまで綺麗に外してくるとはちと意外(そもそも名義から誰か特定できない人も多い)。意外ではあるんだがそんなことよりも鈴子に五行なずなもとい北見六花ァッ!? 黒髪ロングな残念系ハイスペックお嬢様北見六花ってどういうことなの正田卿……ッ!!!!

いやあ、ほんとこのキャスティングはまったく想定しておらず不意を突かれた。(表ではFAIRY TAILとかあったとはいえ)あまりバトルものに強いという印象はなかった人を、戦闘シーンが主体となる(であろう)正田崇シナリオのメインヒロインに持ってくるというのは想像の埒外だった。不覚。逆に、残念系ハイスペックお嬢様という観点では、これはわりと容易に想像がつく感じではある。元々はその声質を生かしたおっとり系キャラのオーソリティだったけれど、俺つばの日和子さんあたりを契機にへっぽこ気味なツンデレキャラを演じることが多くなり、今では得意ジャンルのひとつとしてひろく認識されてるし。
つーかですな、鈴子のキャラ紹介ラフ見るとど真ん中で顔芸カマしてることに噴出せざるをえないんだけど、もしかして以前に恋愛0キロメートルの顔芸に食い付いてたからアサプロ常連の五行なずなもとい北見六花を起用したんですか(邪推)。いやもう、このキャスティングだけでテンションがクライマックスに上がってしまったよ。以前から大好きな声優さんだしキャラ造形も今んとこ一番好みっぽいので、全力で推していく方向で。

それ以外だと、サブキャラで、小山剛志が裏名義なしで参加していたことにビビった。今まではうたわれるものとみなとそふとくらいしか出てなかったはずなのに男らしいな(元)ヒゲ独身…ッ! まあ、いつも裏名義を使わない一条和矢さんも今回参戦してますが。一条さんが演じる神野正田的にイチオシっぽいので今からどんな演技が見られるかが楽しみですわ。それから、サブキャラで今までlight系列では見かけなかった松田理沙の名前があったのも意外といえば意外。

というかlightの声優の起用法ってわりと独特で、他社常連のかなりメジャーな人が全然出てこないとかよくある話。「最近の鉄板声優を固めてみました」とか「どこかの事務所/音響会社に丸投げしました」的なアレでもないし。まあ、けっこう長い間(それこそパラロスの頃まで)ロックンバナナ丸投げちっくだったけれど……閑話休題。ただ、キャラと声優を摺り合わせるキャスティング能力に限っていえば、lightはマジで鉄板。外したの見たことない(敢えて言えば、一時期、ラジオ絡みの起用が多かったのが気になったくらい)。十数年前の最初期の、地雷しか埋まってなかった頃ですらサウンド周りだけはガチだったので、その点だけに限っては強く信頼しており、何も不安は抱いてはおりませぬ(他は全然信用してねーけどな!)


それにしても、燦然と輝く「発売日:今冬発売予定」の文字から立ち上る無限大の不安感ったらないな。正田はテックジャイアンのインタビューで「自分は一度かなり不義理なことをした男なので、罪滅ぼしのためにもコンスタントに作品を出し続けようと思っています」と発言していたが、我々が求めているのはそのようなことではありません。勘違いしないでいただきたい。
御身の爪牙が心から希求する渇望は、発売が2014年だろうと2015年の年末だろうといっこうに構わないから、完全版とかCS移植とかドラマCDとか資料集とかの蛇足を一切含まずとも、本編の出来だけで必要なことをすべて語り尽くせるまで練り込んでからリリースしてください、事前に期待値が限界破裂するまでブチ上げておいてから8800円の有償体験版を掴ませるのはもう勘弁していただきたいというその一事のみでございます。たしか神咒の情報公開時にも同じことを思った記憶があるんだけどな!!07年版ディエスに神咒PC版とこれで二連荘だぜこんちくしょう。仏の顔も三度からという言葉があるけれど、いくら我々が訓練されきった信者とはいえ限度ってものがありますよ本当に。なんとかしてね、頼むから。

『この大空に、翼をひろげて』感想

この大空に、翼をひろげて
この大空に、翼をひろげて 初回限定版(PULLTOP) (18禁) [ゲーム] - Getchu.com
この大空に、翼をひろげて - Wikipedia
この大空に、翼をひろげてとは (コノオオゾラニツバサヲヒロゲテとは) [単語記事] - ニコニコ大百科


看板として長らくブランドを支えていた創立メンバーがSEVEN WONDERを設立して離脱、仕切り直しになった新生プルトップの第一弾。メインの題材がビジュアル的にそれほど映えるとは言えない「グライダー制作」だし、キャラ立てもそれほど目立つ何かがあるわけでない…というかぶっちゃけ地味だし、更に言えばキャラデザ(原画)も初見では目を惹くものではないしということで、要素だけ抜き出してみれば、とても受けるような内容には思えませんでした。予約したのも「今までプルトップ買い続けてたし、とりあえず買ってみようか。五行なずな出るし」くらいの適当な気持ちでした正直。

ところが、豪快に積んだままだったのを巷間の良い評判に釣られて重い腰を上げてプレイしてみたらこれが面白い。グイグイと物語に引き込まれてしまう。

まず素晴らしいのは、メインライターである紺野アスタの十八番である青春群像劇の描写。青春真っ盛りな少年少女たちの、キラキラと光り輝く高揚感と、力及ばず項垂れる無力感。抜けるような青空の爽やかな清涼感と夕暮れ時を帰る道ばたの寂寞感。個人的にとても好きだった『夏ノ雨』でもそうだったけれど、一回しかない青春を謳歌している彼ら彼女にフォーカスを当てた物語を書かせると、紺野氏は本当に上手ですわ。ありふれた、珍しい題材ではないというのは事実だけど、そんな手垢に塗れた題材をここまでのものに昇華させていることはなかなか出来ることじゃない。

しかもその物語を成立させるための方法が「ギミックや仕掛けに頼らず、安逸な方向に逃げず、尺を取って描写を重ねることで物語に厚みを持たせていく」という古典的かつスタンダードな手法ではあることは特筆すべきだろう。昨今のドッグイヤーを地で行くエロゲ(ひいてはオタク業界の)風潮からすれば、面白いのは当然で、それをブーストさせる仕掛け(作品上のものでも広報的なものでも良い)が無ければヒットには繋がらないものだけど、そういうブーストなしに物語の力だけを恃みとするストロングスタイルで真っ正面から特攻して、しかもセールス的にも評価的にも成功しているというのは凄いし、偉い。
これは後付けになってしまうけれど、体験版が公開された段階でかなり話題になったことも、体験版収録の分量だけでもその物語のボリュームをじゅうぶんに実感できるだけのものだったからこそだろう。いや、やっぱり地味ではあるんですが。

使い方に感心したのが画面演出全般。背景画像に独立して動く場所(風車とか)があったりカットインやSDアニメーションといった最近重視される要素は大体取り揃えているんだけれど、その使い方がとてもスマート。演出に力を入れた作品は、ともすれば「俺様の超絶凝りまくったサイコーな演出を観ろ!」的な意識を感じることがままあるのだが(偏見)今作にはそのような肥大化した我は感じにくい。あくまで作品に従属するものという立ち居振る舞いにはある種の上品さと清潔さを感じた。(清潔さ、というのはこの作品のキーワードのひとつだと思う)


まあ、無条件で賞賛する訳ではなくって、難点もちらほら。たとえば物語を牽引するところでご都合主義っぽい側面が何度も顔を出すことで、それこそ「幻と言われていたモーニンググローリーがなんで毎回きっちり発生するんだよ(笑)」とかね。それまでのストーリーラインの中で助走をつけての上でのことなのでそれほどごり押し感はないんだが、これがもっとボリュームが短い作品だったらフルボッコにされててもおかしくない。もともと現実世界においても発生のメカニズムが細かく解き明かされている訳じゃ無いんだから、なんかそれっぽい理屈を付けるだけでも(風ヶ浦市のシチュエーションだけがかなり特殊だとかなんだとか)受ける印象はだいぶ違ったのではなかろうか。

それから、ルート毎の出来のバラツキも気になった。紺野アスタが手掛けたメインルートはともかく、双子とあげはのルートはちょっとレベルが落ちる。作品全体として見た時のバランスを取るために、いわゆる失敗ルートとして設定されていることは兎も角としても、主人公のキャラ立てもブレ気味だし、(特にあげはルートで顕著だったが)内面描写とか地の文の割合が減って会話劇主体になるところには違和感が強かった。普通のエロゲだったらそれほど気にならなかったところだろうが、それまでの長い共通部分での丁寧な描写に感心していたところに、テイストが突然変わってしまっては、どうしてもね。
演出絡みでは、BGM切り替えのタイミングやシーン切り替えが唐突すぎて、ブツ切り感を感じることが多々あったのはとても残念。ものすごく残念。せっかく雰囲気を盛り上げるいい演出をしているというのに台無しだよ。演出自体や歌曲の出来そのものは良いだけに、これはかなり残念だったし、次回作があるなら是非改善してほしいところだ。


対して想定外の収穫としては、当初思っていたよりもエロが良かったということ。尺もそこそこ長めで描写も適度にねちっこいし、シチュエーションも硬軟取り混ぜてバリエーションがある(アナルとマジイキがあったのは意外)。しかし何より、ヒロインがエッチに対してアグレッシブで積極的なのが気に入った。「ビッチ」「淫乱」ではないしかといって「イチャラブ」ともまた違って、快楽を得ることに対して正直でいるところに若い盛りの少年少女っぽい印象があるとでも言うか。きっちりギシアンしているのに、それほど退廃的な香りにはならずどこか爽やかさがあるのよね。
予約特典の「スイートラブパッチ」の内容が公開された時は、「エロの回数が増えることは嬉しいけどプルトップレベルじゃそんなに嬉しくないなあ」などと不遜なことを考えていたというのに、コンプした後はきっちり予約で購入していた過去の自分に五体投地で感謝の心を捧げるレベルでございます。パッチで追加されるシチュエーションがコスプレエッチというのも、本編プレイ後のご褒美感の演出としては悪くないんじゃないかと。個人的には双子との3Pと先輩の野外プレイがツボでございましたよ。これは今までのプルトップの流れとは言いにくいし、企画・ディレクターのYowつながりで旧・千世の遺伝子が流れているのかなあ、などと思ったりもした。あそこも意外と(失礼)エロが濃かったし。


プルトップといえば創立メンバーである椎原・たけやコンビか、ゆのはな・かにしの等の丸谷・藤原の外注ラインがメインのブランドであるという印象が強くあったが、本作はそれらの流れを断ち切って、これからの流れが見えてくるいい作品に仕上がったと思う。自分を含めた今までのプルトップを好んでいたユーザーがどう感じるか、受け入れてくれるのかというのは今後の課題になっていくのだろうけれど、すくなくともその入り口である1発目としては文句の付けようがないものになっているんじゃないだろうか。次にも期待したい。……まずはFDを開けないとな。

『神咒神威神楽 曙之光』 発売記念画像公開

『神咒神威神楽 曙之光』PS Vita版の発売を記念して、公式サイトでGユウスケの描き下ろし画像が公開されていた。正直なところ、神咒のCS移植についてはディエス以上に否定的なスタンスだった。移植決定するまでの時間があまりに短すぎたたことももちろんだし、神咒は物語構成やキャラ配置そのものに難があるから、ディエスの時のような大規模な改修でもしないかぎりは、そうそう評価を改めることは難しいのではないだろうかと。だから取り敢えず予約はしたものの、あまり大きな期待は抱いていなかった。いや今でもそうだ。(まだ開けてません)

でも、この画像は反則だろう!!

最近は公式からの燃料投下っぷりが酷かったけど、まさか神座シリーズという括りで歴代神格が大集合なんて爆弾を落としてくるとは。まあ素直に受け取れば、歴代の正田崇作品をプレイしたユーザーに向けてのサービスなんだろうけど、ある種の開き直りとも取れなくもないな。神咒はディエスとの関連性を前面に出しすぎたことが評価を難しくしている理由の大きなひとつだけれど、そこであえて過去作との繋がりをプッシュするってのは。以下、寸評垂れ流し。


第一天ちゃん可愛い。張り詰めたぱっつん美人さんなのにツンと突き出たおっぱいと切れ込んだスリットとヒモパンがマジたまらん。太ももスリスリしたい。これでインポなルネ山の嫁というのはまさしく宝の持ち腐れだわ。ほとぼりさめたら神座/Zero的なアレを作れください。

第二天の爺さんかっけえ。武神・軍神というイメージそのままで渋いオッサンボイス脳内補完余裕でした。バトル漫画に良くあるパターンといってしまえばそれまでではあるけど、そういうの大好物ですので。つーか、最初に連想したのはBLEACHの山本元柳齋だったりするあたりがなんとも。(ちょうど最近読み直したからだろうけど)

Gユウスケ絵のサタナイル様再臨きた! でも扱い小さいよもっとクローズアップしてよお顔を見せてよ!あ、そこで声が棒読みwwwとか超新星爆発で一撃wwwとか草生やした奴は全員M区画送りな。あと、神格という括りから外れてしまうとかは承知の上で言うならば、アストを描いて欲しかった。というか、他の機会でも構わないから、Gユウスケが描くアストが見たい。

なにこの綺麗な水銀&黄金。特に水銀の変態臭が極限まで薄まっているように見えるんだけど。こんなんニートじゃねえ!神格というフィルタを通せば濾過されて綺麗に見えるのかもしれないけれど納得したくねーなー。獣殿はどっちでも行ける人だから問題ないや。というかぶっちゃけ女性向け漫画とかでありそうな線の細い感じがするねこれ。

黄昏と刹那については、これは言葉がないね。刹那が背中を向けていて顔が見えず、その視線の向かう先が第六天であり、黄昏を護っているような構図と取れるところがもう。もう。もう。練炭は物語が新しい展開を迎える度にその魅力が重層的になっていった、成長したキャラだなあとつくづく思う。あと、遠景にもかかわらずそのサイズ感がわかるマリィのおっぱいパネエ(台無し)

最低野郎の分際で、なんかカッコつけたイケメンポーズしている波旬には非常にイライラするなwww なに上から見下ろしてんだこのウンコ野郎。上でも書いたように、刹那/夜刀と対峙するような構図にも見えるところが本編との関連性を匂わせてとても上手だなあと感心した。夜刀様マジ主人公。

曙光曼荼羅のふたりが腕を絡めているところがいいね。竜胆が覇吐に重心を預けているようにも見えるところがグッと来る。こういう構図をもっと本編で早いうちから打ち出して欲しかったんだけどなあ。あと、ポジション的に隣の黄昏&刹那コンビとワンセットでの比較構造とも取れるんだけど、夜刀と覇吐が背中合わせで顔を合わせていないところが絵になるわ。覇吐はこういう自然体のポーズが様になるという点では貴重。
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