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『Hyper→Highspeed→Genius』 コンプリート

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広報展開の最初期にイベントで公開されたHyper→Highspeed→Genius ティザームービーがいきなりエルシャダイのパロディだったり公式配信の実況プレイ風動画が無法地帯だったり、黄色を基調としたわりとエッジなサイトデザインだったり、そもそも原画家が外注のミヤスリサとユキヲだったりと、そつが無い優等生的な作りをするういんどみるらしくないタイトルだなぁと思っていた今作。

主人公である久司朗は、自らの知恵を武器に世界に対して戦いを挑む野心家ということでは夜神月@デスノートやルルーシュ@コードギアスを、自らの目的の為に戦略的に女性キャラを攻略せんとする意志は桂馬@神のみぞ知るセカイあたりを彷彿とさせるような、あまりエロゲでは見かけないタイプの性格付けだったので、プレイ前はかなり期待していた。
が、実際にプレイしてみると、すぐにテンパるし、打たれ弱いし、自らの恋愛感情に振り回されるし、情にほだされるしといった具合の、悪党を気取りきれない好青年だったというオチ。自らの知能ですべてを動かしてやるぜ!キリッ!というイメージが強いのに、実際は自ら動くことが多いので参謀キャラという印象も薄い。しかし、キャラの魅力を前面に押し出すADVの主人公として考えるならば、このキャラ立てで正解だったのだろうなとも思う。あまりに自らの目的意識が勝ちすぎてしまっていてはキャラ攻略の際にプレイヤーが罪悪感を覚えてしまっていただろうし。主人公の冷徹・明晰な立ち居振る舞いを楽しむというよりは、必死でカッコつけようとするけど上手くいかない三の線の主人公を、作中ヒロイン達と一緒にニヨニヨしながら愛でるというのが正しいような気がする。どんな萌えキャラだよ久司朗。
そういう意味では、大きな不満点であるはずのシナリオの薄さ・ご都合主義的な展開も久司朗のキャラのおかげであまり気にならない。当初の煽りからすると後半ではシリアスなノリになっていくのかと思っていたけれど、実際には一部のルートを除いてはわりと緊迫感が薄い展開のまま続く。普通ならばそれを不満に思うはずなのだが、物語の主軸である久司朗が非情になりきれない厨二を気取っただけの心優しい青年なので、そんなヌルい展開でもいいかなという気持ちになってしまうのだ。その辺、マジもんのピカレスクではなく、あくまでピカレスク“風”の物語であるというのもエクスキューズ。ただまあ、そんなヘタレな946ではあるが、作中で語られる「追い詰められることで本領を発揮する」という人物評のとおりに肝心要のところではビシッと決めてくれるので、あまりストレスは溜まらないな。

久司朗と対になる相棒兼共犯者兼メインヒロインである光理だが、これもまた良かった。ミヤスリサのキャラデザは破壊的なまでに可愛いし(特におっぱいと悪魔デザインのアクセサリ)澤田なつの演技も素晴らしい。久司朗をからかうための誘惑台詞とか久司朗にツッコミを入れられたときのわざとらしい演技とか、耳が妊娠するかのごとき威力ですよはい。「あいたっ」とかのボイスを延々とリピートし続けたのは俺だけじゃなかろう。それでいて、物語内での役割付けやキャラ相関関係におけるポジションについては今まであまり見かけなかったタイプなので目新しさもあるんだよな。コードギアスでいうところのC.Cポジではあるんだがアレとはまたちょっと違う感じで、本人以外のルートで存在が消えていくところの遣り取りとかがお気に入りですよ。

そんな久司朗と光理という特異なキャラと関わり合うことの作用によって、そう特別な性格付けをされている訳でもないメインキャラ勢にも魅力が生まれてくるのが本作の面白いところ。メインヒロイン3人の中では姫乃がダントツで可愛くて、血迷って抱き枕を買ってしまいかねないレベル。珍しいクール系ダウナーなアグミオンというのもなかなかに美味でございました。翆名は可愛いけれど、メインヒロインとしての可愛さよりもサブの立場になったときの役回りの美味しさとか腹黒さの方がより強い印象があるのがなー。でもギフトを使用しているビジュアルは一番好き。サクラは…犠牲になったのだ(以下略)
サブでは誰が取り立ててという訳でもないけれど、どのキャラも相応に可愛い。その中で敢えて言うならばアイリスかな。物凄く狙いすぎのキャラ立てではあるけれど、可愛いことは可愛いから何も言えない。声も杏子御津だし。あとパティのちょろ可愛いさは異常すぎる(佐藤しずくの馬鹿キャラマジ最高!) 数は少ないけど地味に男性キャラも良くって、西九条先生はその素敵ボイスだけですべてを持っていっちゃうのが卑怯すぎでございます(つかエルシャダイネタはその存在だけでも笑えてしまうから困る)。僚樹はその前に『神咒神威神楽』をプレイしてたんで、覇吐がオーバーラップして困ったけど。
というか今作品は全体的にキャスティングが上手。豪華声優陣がキャラの魅力を上手く引き出しているものだから、声優の演技による補正が大きいのなんの。シナリオ展開のアラとかをあまりグダグダ言う気にならないのもその辺の効能によるものが大きい。

しかし、エロシーンにはとてもとても不満があった。ともすればFD要員にされがちなメイン格以外のキャラにもちゃんとエロシーン(と、個別ルート)を用意してあること自体はとても偉いので素直に賞賛したい。回数としてはもメインの聖女候補(+光理)は2回でその他サブは1回の合計13枠と、トータルの分量を考えればそれほど悪くはない。無いのだが、そのエロシーンの実用性がとても微妙だ。1回のシーン枠の中でフェラで発射→本番で発射とか、膜を破って発射→そのまま連戦なんて具合にシチュエーションを変え、発射回数を増やして頑張ってはいるのだけれど、根本的にエロテキストの描写がヌルい。ついでに演技も(声優補正は効くけれども)ヌルいし喘ぎ声もあまり激しくない。ういんどみるは「萌え重視のブランドだけどエロも頑張ってます」的なところで特徴を出していたメーカーという印象があったから、エロにはそれなり以上に期待していたので「もっとやれたはずなのに、何故…」とガッカリ。なまじキャラが可愛いだけにガッカリ感は更に倍。どうしてこうなった。まあ全体ボリュームからしたら仕方ないのかもしれんけど、それでもさー。


思いっきりネタに偏ったニコニコ動画での公式実況を始めとして、良くも悪くもフラットな(万人受けする間口の広い)萌えゲーを作るメーカーだと認識していたういんどみる作品としては挑戦的な方向性だったのだろうが、今回についてはその挑戦は概ね成功しているのではないかと思う。ご都合主義的な物語展開とかヌルいエロとかサブヒロインのルート短すぎとか内容にケチを付けたいところはとても多いのだけれど、好き嫌いで言うならばとても気に入った。……というか、今までプレイしたういんどみるのタイトルの中ではこれが一番好きかもしれない。この物語世界にもっと浸っていたいからもう1周再プレイしようかなと考えてしまうくらいに愛着を持ってしまったよ。今までは「HHG」という略称では旧Cat's Proのハートヒートガールズ(林家志弦のアレ)しか思いつかないような老害思考だったんだけど、今後はこっちの方が先に立ってしまいそうだ。(ちょっと消化不良の感があったエロシーンを補完するという意味合いにおいても)ファンディスクが出るならフルプライスだろうが全力でルパンダイブする所存でございます。

『雨芳恋歌 センセイ。わたし、もうオトナだよ……』 コンプリート

雨芳恋歌 センセイ。わたし、もうオトナだよ……

主要スタッフの退社などでごたごたしていたキャラメルボックスのサブブランドのデビュー作品で、それまでのブランドイメージとはかけ離れたエロ重視の作風。結構前に書き上げていたのに更新わすれてましたわ。

イントロダクションだけみると情念系のような印象を受けもするのだが、実際のゲーム内容ではそんなことはない。序盤早々(体験版部分)の時点で夏恋との関係が渚にバレてヤってしまうのだが、そこから主人公の寵愛を奪い合うようなドロドロな展開になることはなく、昼間(学校)では渚と、夜(旅館)では夏恋と関係を結ぶ双方合意の上でのハーレム展開を早々に構築。以降それを蒸し返すことはなく、思う存分きゃっきゃうふふギシギシアンアンを楽しめます。渚とのエロシーンを見てしまった夏恋が、嫉妬に燃えるのではなく発情して迫ってくるというシチュエーションが今作品のスタンスを象徴している。
エロとエロの合間に日常シーンが挟まっているという構成でムダにスキップを多用する必要も無いし、この手のネタの定番である「教え子との関係が学校にバレてうんぬん」みたいなこともない(つか教頭先生も黙認状態)安心設計。拍子抜けといえなくもないが、抜きゲーで中途半端にシリアスな要素を持ち込んでも失敗に終わることが多いのでこれは英断だろう。

攻略キャラ2人だけというのは普段ならばネガティブ要素であるが、今回についてはそれが全く問題にはならない。つーか夏恋さんのキャラ立てがとにかく最高。ロングヘア美人で世話焼きで気が利いてノリが良くてエロに積極的でM気質で声が遠野そよぎとか、文句が付けようがないくらいにパーフェクト。あとホットパンツから伸びた足が思わずぺろぺろしたいくらいに色っぽい。
普段はともすれば主人公を尻に敷いている世話焼き女房な風情の夏恋さんが、夜になると“女”の顔をあらわにして、苛めてオーラをプンプン振りまきながら発情して迫ってくるというそのギャップが最高にエロい。雨が降り止まない夏の海辺の田舎町の、むせ返るような夏の暑さと雨の匂いと塩気混じりの湿気が入り交じった空気の延長線にある、部屋に充満した体臭と精液と愛液の匂いが今にも匂ってきそうなエロス。そんな純愛エロゲらしからぬ生っぽいエロチシズムを感じさせながらも、可愛いクロサキ絵と遠野・野神両名の演技がベースにあるからキャラ萌えの軸は微塵もブレていないのがポイント。
あと、曲数こそ少なめだが音楽がとても良くて、これも本作独自の空気感の構築に成功している……と思ってあらためてクレジットを見てみたらFunczion SOUDNSで主題歌はMarica嬢じゃねーか。そりゃ悪くなりようがねえわな。

エロのシチュエーション的には、渚は以前からべた惚れだし夏恋もレイプ同然に犯されたのに骨抜きにされているし両者とも処女を主人公に奪われているしということで、主人公の方が精神的上位に立った上での攻めがメイン。夏恋はフェラにおっぱいに奉仕プレイ多め、渚はアナル攻め強化しての快楽調教多めとシチュエーションを振り分けて差別化を図っている。
フルプライスのタイトルとしては攻略キャラは2人のみで回想枠もそう多くはないものの、描写の尺は十二分に取っているし、言葉責め・ピンポイント重点攻撃・淫語(おちんちんおまんこおっぱい程度で軽めだが)を織り交ぜたねちっこい前戯でトロトロに溶かされたヒロインの痴態が素晴らしくエロいので実用性は十分。軽度のアヘ顔というか、快楽に翻弄されて視線は虚ろで口は呂律が回らずヨダレだらだら垂れ流しというイキ描写が多いのは個人的にはかなり評価が高い。ヒロインがそんな状態でも攻めっ気が強い主人公は追い打ちを掛けるようにガンガンと攻め立ててくれるんで、あ゛あ゛あ゛あ゛らめぇいきましゅ~てな具合の連続絶頂もかなりの頻度で拝めるのが素晴らしいです。アヘ顔つってもそこまでキツめではなく、キャラの可愛さを保った上で崩しているギリギリのラインだから拒絶反応を起こす人も少ないだろう。
ただ苦言を呈すならば、もうちょっとエロのシチュエーションに拡がりが欲しかった気もする。キャラ毎にエロシチュに偏りを持たせたことが、逆に広がりを縮める役割となってしまったようにも見えるし、日常→エロへのシフトが多かったからか服装バリエーションは少なめ。ヒロインを極度に虐めるようなシチュエーションがないから仕方がないが、アブノーマルなプレイは控えめな傾向だったのも残念だ。

そのエロスを引き立てているのは本作が目を惹く大きな要因ともなっているグラフィック。クロサキ氏が、肉感的かつ蠱惑的でありながらもキャラ萌えの可愛さは崩していない絶妙にエロかわいい原画を描ける人だったと見抜いていた人は少ないだろう。おっぱいが乳袋を取っつけただけに見えることが何度もあるし、時たま酷く崩れたCGがあるが、その程度はこのエロスの威力の前にはさしたる問題にはならない。このエロさを下支えしているのは肌の色や液体の質感を重視した塗りで、今までのキャラ箱の方向性とはかけ離れているが作品にはとてもマッチしている。多分これが従来の萌えゲー風のアニメ塗りだったら台無しだったであろう。


和姦志向でエロが濃い作品となると、エロコメ寄り(かぐやBYとかメイビーとか)になるか、快楽調教・ヌル凌辱チックなものになるか、キャラ萌えメインで+エロみたいなのか、ロープライスにありがちな属性一点張りのフェチ系統(孕ませとか)になるのがが大方であるが、そこで可愛い系の絵柄・顔立ちなのにエロは激しくガンガンやってます汁飛びまくりですみたいな路線というのは、エロ漫画あたりでは結構見かけるんだけどエロゲではありそうでなかったライン。キャラ萌えゲー+エロみたいな体裁ではちと物足りないし(まあ喰うけど)、ギャグに見えてしまうくらいに異次元クラスに突き抜けたエロは(ダメとは言わんが)ちょっとなぁ……と思ってしまう自分のような手合いにとっては今作品はジャストなバランス。そんなスイートスポットに綺麗にボールを投げ込んできた和姦抜きゲーの秀作でした。
「クロサキ原画でイキ描写多め(軽度のアヘ顔あり)」「ロングヘアでおっぱい大きくてエロいお姉さんは正義」「残念美人な遠野そよぎマジ最高!」「イキまくって語尾が怪しくろれつが回らなくなっちゃうシチュ大好物です」というあたりでにピンと来るならショップにダッシュすべし。体験版とWebサイトのプレイアブルデモの“売りとなる要素の打ち出し方”は振り返ってみれば極めて的確だったので、それらに反応したなら買って損はしないはずだ。アクティベーション有りとか攻略キャラが少ないとかってことはこの際たいした問題にはならない。個人的なローテーション頻度は極めて高いですよ、ほんと。

『CURE GIRL』 コンプリート

CURE GIRL

今まではロープライス市場で展開していたNoesisの初となるフルプライスタイトル。「ダメ人間たちのコミュニケーション」という、(最近のラノベとかで見かけそうな)ネタを引っ張ってきたので注目していたのだが、正直期待はずれだった。

ゲームは女の子とのコミュニケーションで親密度を上げていく前半の共通ルートと、好感度を上げたキャラとの物語が展開される後半の個別ルートに分かれるのだが、とにかく共通ルートのシステムが練り込みが甘すぎる。会話の話題を選んでヒロインとの親密度を高めていくシステムだが、会話カプセルのバリエーションが少ないので途中で「やらされている」作業感を強く感じるようになるし、会話チョイスのゲーム性が低いので攻略の意欲が高まらない。というかそもそも会話イベントが単調で面白くねえのが致命的で、途中で眠くなってくる。
そんな苦行を経た末の個別ルートもあまり良くない。「物語展開がありきたり」「前振りなく物語が動くから拙速な印象を受ける」というところに問題があって……つうか、本筋の攻略ヒロインとの交流よりも、枝葉であるラーメン屋や中華料理屋のイベントの方が印象に残るっておかしくないか。この主人公の日常って延々とSNSに入り浸ってはラーメン喰ってるだけじゃね?と感じてしまうってのは確かにダメ人間の日常としてはリアリティがあるかもしれんが、それじゃダメだろう。

ただ、シナリオ以外の要素は良いのが困るんだ。そもそも絵がいい。珈琲貴族の絵がフルプライスのボリュームで拝める幸せ!! 今までは抜きゲー要素の強いロープライスタイトルばかりだったけれど、今回はフルプライスということもあってボリュームは豊富だし、明るめの彩色だし、メインヒロイン3人とも造形が可愛いしで言うことありませんわ。顔のバランスがまちまちに感じるところはご愛敬。
その絵の魅力に引き摺られてか、エロもそんなに悪くはなかった。地のテキストは普通だし尺も長くないしでもっと熱くなれよ!と修造ばりに吼えるところだが、キャラデザの良さ(黒髪ロング最高!)と声優の魅力(乃嶋架菜最高!)とコスプレシチュの多さ(半脱ぎ!ブルマ!スク水!メイド服!!)のおかげでそれなりに実用性が出てくる。凌辱シーンはシチュを水増しするために無理矢理押し込みました感が漂うけどそれはそれで。俺にとっちゃ貴重な乃嶋架菜枠というだけで価値があるわ。

それから、折倉俊則氏が手掛けた音楽がすげえ良い。名前だけだと誰?という感じだが、『Triptych』(ALcot)や『Aster』(Rusk)のサウンドを手掛けた人と言えば、分かる人は分かるだろう(ちなみにブランド前作の『フリフレ』とかも手掛けてたりする)。BGMは自己主張バリバリで空気読まない感じ(頻繁に使われる日常BGMに女性コーラスが入る時点で推して知るべし)なので、ゲーム上での役割を思えば賛否両論だろうが、クオリティについては文句を付けるところがない。aya Suekiと真理絵が歌う主題歌が素晴らしいのは言うに及ばず。最初から音楽の出来を当て込んで、サントラをコンプリートできるソフマップで予約したけど大正解だったわ。敢えて苦言を呈すとすればベースとなる楽曲のバリエーションが少なめで、同じ曲のアレンジ違いというパターンが多いことくらいだけどまあいい。


でもまあ、トータルではやはり「着眼点・コンセプトは良かったんだけどうまくゲーム化出来ずにとっちらかった失敗作」以上のものでしかないのがすごく勿体ない。ブランド初というのが関係しているかは不明だが、「フルプライスの作り方ではない」という(その根拠をイマイチ言語化できない)印象を強く持った。「ダメ人間同士のコミュニケーション」というコンセプトはどちらかというと中短編向きかなという気もするし、ミドルプライスのボリュームで最初から作っていれば、無駄な要素を入れ込む余地はないしアラも見えにくくなるから良かったのかなあなんて思ったり。

『ラブラブル ~lover able~』 コンプリート

ラブラブル ~lover able~オフィシャルホームページ
ラブラブル~Lover Able~ 初回版(SMEE) (18禁)- Getchu.com
【Game-Style】『ラブラブル ~lover able~』特集
【Game-Style】Game-Style Extra:SMEEインタビュー(『ラブラブル』)

「ヒロインと恋人になってイチャラブする、キャラクター重視のゲーム」というコンセプトを掲げたSMEEの3作目。絵柄が気に入ったのと体験版が好感触だったので購入したのだが、甘いイチャラブをメインに押し出しているだけあって、とにかくヒロイン勢がみんな可愛い。立ち絵が可愛いイベントCGが可愛い声が可愛い性格が可愛い反応が可愛い。あまりの可愛さに臆面もなく「全員俺の嫁!」と叫びながらダッシュしたくなるくらいに可愛い。砂を吐きそうないちゃいちゃシーンをプレイしている自分の姿は、きっと酷い顔面崩壊を起こしているだろうから怖くて誰にも見せられませんわ。みんな可愛くて甲乙付けがたくはあるのだけれど、個人的には小悪魔だけど可憐な天使である花穂と個別ルートに入ってからの遠野そよぎボイスの破壊力が無双すぎたつぐみが特に好き。
ストーリーラインに見るべきところは無いのだけれど、全体的に明るく元気が良い展開で、プレイヤーのストレスが溜まりにくい設計にしていることは美徳と言っても良いだろう(実妹攻略の花穂ルートなんかは、捌き方次第ではかなり鬱々としたものになってしまっていたはず)。そして、凝った物語展開ではないことが、逆に個々のイチャラブなシチュエーションの耐用性を高めているような気もしてくる。つーか髪型や私服の組み合わせを変えて再プレイしても、全然プレイの新鮮さ・楽しさが薄れないってどういう事なのさ。
それから、話を進めていくなかでヒロインと恋愛関係になった影響でヒロインの外見や性格を変えてくる演出(このブランドの前作「らぶでれーしょん」でも採用していたらしいが未プレイ)は、細かいことだがとても効果的で上手だと思った。これはヒロインの変貌ぶりが破壊的なまでに可愛いのもさることながら「自分がプレイした影響でヒロインが更に可愛く変わっていく」ことがプレイヤーとしての大きな達成感・征服感に繋がっており、とても気持ちが良い。

そんな可愛すぎるヒロインに相対する主人公のキャラ造形もなかなかしっかりしていて、適度にバカだけど締めるところは締めるというある種の古典的なキャラ立てではあるものの、思考および行動原理がしっかりしているので好感が持てるし感情移入をしやすい。そして、ヒロインの可愛さに対して「可愛い!」「萌える!」とうるさいくらいにストレートに反応してくれるのが気持ち良い。ヒロインと仲良くキャッキャウフフしたいのに、モニタの前の主人公が(さしたる理由も無いのに)うじうじグダグダとやってるのを眺めている時のプレイヤーのストレスは筆舌に尽くしがたいだけに、それを巧妙に排除した造形にしているところは極めて高く評価したい箇所だ。

エロシーンは個別に切り出してみれば特筆すべきものはないのだが、ラブラブ感に溢れた会話の遣り取りと声優さんのハチミツをぶっかけたような甘い演技が興奮をかき立ててくれるため、実際の質量以上に実用性は高い。水着とかブルマとかレストランの制服といったコスプレ的なシチュエーションを盛り込んでいることも嬉しい&実用性の向上に寄与しているし、なによりみんなおっぱいが大きいのが最高だ。豊満ではない(婉曲的表現)と作中で言われているつぐみですらわりとおっきい感じに描写されているのがいいね。


ただまあ、不満点もある。たとえばCG。塗りは概ねしっかりしているが原画のクオリティに幅があって、ガッカリさせられるような構図がけっこう見られるのはとても残念(ただ、これ以上にレベルが上がって洗練されると、それに伴って失われる魅力も多くあるというギリギリのラインなのかなと思わないでもないが)。それから、キャラ毎のリソース配分の拙さ。「理想の嫁を探し出す」ツールとして機能しているこのゲームで、キャラ間の待遇の不平等を作ってしまうのはもっともやってはいけないことではなかろうか。具体的には「なんでさつきだけCG・回想枠が明らかに少ないんだよオラ」ということなんですけどね。

それから構成について。共通ルートから個別ルートに入った途端、助走無しで一気にブーストして恋人関係になってしまって、常時ダダ甘の展開が延々と続くというのはちょっとどうかなと思った。「徹底したイチャラブ」というメインコンセプトからは外れてしまうのかもしれないが、もうちょっとゆっくり加速して欲しいというか、勿体付けて欲しかった。ただでさえ可愛いヒロインと好感が持てる主人公なんだから、くっつくかくっつかないかの友達以上恋人未満な微妙な期間の、胸の高鳴りとかドキドキとか上手くいかない逡巡とか、そういう甘酸っぱい描写が見たかった。そのほうが本格的にくっついてからのラブラブ描写が引き立ったんではないだろうか。


まあそんな感じで不満を上げたらきりがないし、狙いを集中させたがゆえの脇の甘さを追求しようとすればいくらでも可能ではある。「プレイ後になにも残らない」という反論も正しい。……んだけれど、プレイしている最中の高揚感・多幸感の凄まじさゆえに、そのような瑕疵には目を瞑ってしまおうと思わされてしまうのよな。確かに女の子といちゃいちゃする“だけ”のゲームではあるのだが、コンセプト外の要素を可能な限りそぎ落として、プレイヤーがヒロインとのイチャラブに集中できるように心を砕いた上で、ヒロインの魅力を一点集中の破格の突破力で持って作られてしまっては屈服せざるを得ない。白旗ですわ。
何が凄いかって、Game-Styleの開発者インタビューで語られている作品の訴求ポイントについては、かなりのレベルでクリア出来ているということ。これはつまり、企画の根っこをブレさせず開発者の狙い通りの「ザ・ギャルゲ―」な内容のものに仕上げてきているということで、素直にすげぇことだと思うのですよ。HOOKのサブブランドということでSMEEにはあまり良い印象を抱いていなかった(というか今までほとんど眼中に無かった)のだが、過去作も気になってきたので機会があったら遡ってみようかと思う。当然次回作は指名買いの方向で。

『Flyable CandyHeart』 コンプリート

Flyable CandyHeart
Flyable CandyHeart 初回生産版 (ユニゾンシフト:ブロッサム) (18禁)- Getchu.com
君の名残は静かに揺れて

外伝的なスピンアウト作品として『君の名残は静かに揺れて』がリリースされてはいたものの、正式には今回が初となる『Flyable Heart』のファンディスク。緩めの順番縛りがあるオムニバスシナリオの構成となっているが、内容は大まかに分けて以下の4つ。

1. 非攻略キャラの攻略(ぐみ、マックス/あきら)
2. 既存キャラのアフター/ifストーリー (天音、茉百合、桜子、くるり)
3. 複数タイトルクロスオーバーのお祭りシナリオ(らぶらぶフライアブルハザード)
4. Flyable Heart本編の世界観の補完(結衣、すずの)



まず今回のファンディスクで期待されたことといえば、本編で非攻略だったぐみちゃんやあきら(マックス)などのサブキャラの新規ルートだろうが、これについてはあまり出来が良いとは思えなかった。そう感じた理由としては「サブのポジションだから光り輝いていたキャラ性なので、メインに持ってくると面白くない」という良くあるパターンと「(複数ライター制だからかは不明だが)シナリオそのものの出来があまり良くなかった」という2点。個人的にはMAXルートでのネットスラング使いまくりなテキストがあまりの寒さにキレかけたから後者の印象が強かった。マックスルートのオチの付け方には笑ったし、恋愛関係とはかけ離れたキャラ性であるぐみちゃんをどうやって攻略するかというフラグミサイラー会議での議論の結果には、なるほど確かにこういうアプローチだったらぐみちゃんも恋愛感情を意識するようになるかもしれないなあと納得はしたけど。

次に既存キャラのアフター/ifルートストーリーだが、これは全体的に良かった。桜子マジ天使そよそよ最高!とかくるりの「しょー」の破壊力なんかも大きかったけれど、特に本編ではシナリオ展開のせいでキャッキャウフフ成分が少なかった天音の可愛さが天元突破しててもう辛抱たまりません。ってか嫉妬モードの天音の破壊力は洒落になってませんよほんと。宮沢ゆあなマジ上手。今回は(最後の結衣/すずのシナリオで収束されるが)個々のシナリオはパラレルの関係になっているぶん、物語やキャラとの遣り取りの美味しい部分だけを味わえる構成になっているのが嬉しい。
そして個人的本命の茉百合さん。彼女はゲーム本編ではなくスピンアウト外伝企画である『君の名残は静かに揺れて』の後日談。きみなご本編の物語はとても綺麗に閉じてたからこの後日談は蛇足と言えなくもないし、そこで彼女ひとりが大幅に掘り下げられていたからか、シナリオ分量も他ルートに比べたら控えめなものだった。だが、今回のシナリオは、きみなごをプレイした多くのユーザーが「本当はこういう光景を見たかったなあ」と思ったであろう、物語の最後の心残りを掬い取るような“いい蛇足”だったと思う。長編漫画の最終刊で、雑誌掲載で完璧に終わった物語に数ページのエピローグが書き足されていて、余計だなと感じながらもつい顔がほころんでしまう時のような、そんな感じ。つーかインストの「Solitude」は反則だろう! それだけで涙腺が決壊するわ!

『Peace @ Pieces』『ななついろ★ドロップス』『ALICEぱれーど』といった他タイトルとクロスオーバーしたお祭りシナリオである「ふらいあぶるなないろぴぃしぃずぶろっさむすぺしゃるぱれーどハザード」(略称「らぶらぶフライアブルハザード」)だが、これはタイトルから容易に想像出来るようなハイテンションなお祭りシナリオでもう最高に楽しい。エロ方面でも頑張っており、まさかの茉百合×天音さんという俺得カップリングまであって興奮がリミットブレイク。更に(予想はしていたけど)驚愕のBLッサムネタまであったが、これがまた色んな意味でハマりすぎてて腹筋崩壊。というか蛍は今回全編に渡って活躍しすぎだ。
つか、未プレイのタイトル(具体的にはぴすぴす)もちゃんとコンプしておくべきだったとプチ後悔ですよ。逆にありぱれは頑張って開けておいて大正解だったな。エムドリ無双だったし。

そして最後となる結衣とすずののシナリオだが、世界観の本筋に絡んでくるメイン格なのにFH本編ではあまり人気が無く、あまつさえ(設定上仕方が無いことではあるが)『君の名残は静かに揺れて』では登場することすら許されなかった2人のテコ入れと同時に、「フライア」を軸にした世界観を膨らませ、本編での説明不足だった部分を上手い具合に補完している。FH世界の大仕掛けは“奇跡”を起こす物語の仕掛けとしてはアリだとは思ったが、それが明かされるタイミングが悪く説明不足だったので釈然としない気持ちも強く残っていたので、それらの不足感が今回解消されたのはとても良かった。
それから、FH本編では、キャラAを攻略したルートではキャラBが悲惨な事になっていたりキャラCの存在そのものが無くなってしまうという“あちらを立てればこちらが立たず”な状況が作り出されていて、(物語ではその二者択一はそう前面に押し出されて居なかったとはいえ)ちょっとこれはナシじゃねえの?という気持ちがあったのだが、今回の2シナリオではそれらについてもみんなが不幸にならず幸せになれるような状況を作り出していて、それに対しての充足感が大きかった。サブタイトルの「the future is always connected」(未来はいつでも繋がっている)という惹句にすべてを集約させてくる構成が巧い。


祝祭空間の明るいムードの中で、本編でボリューム不足だったりした部分を補完しつつ物語世界を綺麗に膨らませて綺麗に閉じてみせた、いいファンディスクだった。物語で描かれる光景・心象が琴線に触れたという点ではきみなごの方が圧倒的に好きだけれど、FH世界のファンディスクというにはちょっと異質だし、FHの世界観からしたらこちらの方が正解だろう。FH本編→きみなご→FCHと世界が拡がっていったのもよく分かるし。
あと、すずのシナリオで流れる新BGM「Blessing」が素敵すぎて思わず鳥肌が立ったので(水月陵マジ最高)ブロッサムちゃんはきみなごと合わせてサントラを出す作業にさっさと取りかかれと強く主張したい。

関連エントリ
哀しみの機械 - 『Flyable Candy Heart』 特設サイト公開
哀しみの機械 - 『君の名残は静かに揺れて』 コンプリート